北海道大学 薬学研究院 教授
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研究が壁に当たったらどうするか。ラボの同僚に聞く、友人に聞く、ボスとディスカッションする、いろいろ手段があると思いますが、結局のところ、その分野の世界の最前線で働いている人に聞くのが一番です。
やっぱりこの表現型は本物だ。絶対間違いない。と思って夢中で顕微鏡を覗いていたところにグラリときて、数日間は思考停止。
心の整理は今だについていないような気がしますが、引っ越し直後に被災された東北大の杉本さんが、さきがけRNAの仲間に宛てたメールで(当時杉本さんはさきがけRNAと生体機能のアドバイザーでした)「明けない夜はない」という言葉を引用されているのを目にして、止まっていた時計の針がようやく動き出したのを今でもよく覚えています。
さて、レフリーコメントをみて心を入れ替えてきちんと♀マウスの組織におけるNeat1の発現をみたところ、見たこともない強いシグナルが卵巣で見られたわけですが、こうなると卵巣がらみの表現型をきちんと見なくてはいけないのは明白です。
昨年の話ではありますが、ようやく、パラスペックルの生理機能を報告したNeat1 KOマウスの論文が世に出ました。一応、核内構造体に蓄積する長鎖ノンコーディングRNAとしては、Xistを除いては始めての表現型報告になるのではないかと。かなり嬉しかったので、ちょっと派手めにバナー風でリンク貼っときます。
表現型が見当たらないという論文を3年前に出しておいて今度は見つかりましたってズッコイなあ、というツッコミが入りそうですが、すいません。当時は気づかなかったのです。。。といいますか、実はこれ、レフリーのコメントの賜物でもありました。
IGVは濡れねずみ研究者にとってとっても便利なツールで、難しい統計学はわからないけれども見ため勝負、顕微鏡観察には自信あり、なんていう研究者にはとっておきのNGS解析インターフェイスなわけですが、できるはずのちょっとしたことができなかったりして右往左往してしまったのでおなじみ恥さらしのNGS覚え書きシリーズです、、、
SIMは構造照明をあてた複数の画像から計算で高解像の画像を再構築します。したがって、シグナル、つまり光が全て計算通りにサンプルの中を進むような条件を作り出してやることが非常に重要になります。そのために必要なのが、適切な厚さ(0.17 mm)のカバーグラスを使うことと、適切な屈折率を持つマウント剤を使用することです。現状、様々なマウント剤がSIMで「使える」ことになっていますが、コスト面、クオリティ面、いろいろ考えると、マウント剤はTDEがベスト!!です。というか、TDE以外のマウント剤では綺麗なパラスペックル像を得ることはできませんでした。
超解像顕微鏡は解像度が上がる分、ピクセルあたりのシグナルは当然弱くなるので、明快なイメージを得るためには通常の抗体染色よりも強いシグナルが必要となります。とはいえ、抗体染色の良し悪しは抗体の性能に大きく依存するので、濃度を上げる、反応時間を長くする、といった小手先の工夫では大して変わらないというのも事実です。抗体が染まらんかったら自分で作れ!!これこそが学生時代から叩き込まれた王道、という方も多いのではないでしょうか。
カバーグラスを洗うやり方としては
1)硝酸や硫酸などの強酸
2)ただの洗剤
があって、プラスミド精製に例えるなら1)がセシウム、2)がキアゲンみたいなところがあるというのは前回書いた通りなのですが、そもそもの問題として、あんなに激しくシャカシャカして、傷かつかないかということなのですが、気になるので顕微鏡で覗いてみました。
大学院入試も終わり、研究室に配属されたのは1992年9月。最初に与えられたミッションは、『形態誘導因子エピモルフィンのファミリー分子を同定せよ』でした。今なら配列をBlastに投げて3秒で終わる作業ですが、当時は縮重プライマーを用いたPCR→PCRフラグメントのクローニングとアクリルアミドゲル電気泳動でのシークエンス→部分断片を用いたλgt10ファージライブラリースクリーニング→全長をつなぎ合わせるサブクローニング、と、それなりに手間のかかる仕事でした。とはいえ、技術的には確立している実験ですし、やる事は決まっていますから、体力だけは自信がある人間向けの実験であったと言えましょう。そして誰しも20代の頃は体力に自信があるものです。
今年もやってきました。冬の風物詩、分子生物学会です。ノンコーディングRNA関連のシンポジウムやワークショップをちょっと拾ってみますと、あるわあるわ、、、