2017年06月25日(日)

トキメキ・シーケンシング

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いわゆる「次世代シーケンサ(NGS)」が使われはじめたのは、およそ10年前のことでした。その当時所属していた研究室でも、「なんだかスゴイ機械がでてきたらしい!」といって、早速興奮気味に勉強会が開催されたことを覚えています。初期のNGSである454がリリースされた2005年に私はまだ学部生で、実際にNGSを使って研究するようになったのはさらに数年先のことでしたが、それまで基本的にデータベースに登録されているシーケンスデータを用いてバイオインフォマティクス解析を行っていた私にとって、自身でデータを取得するところから研究を始められるということはパラダイムシフトでした。

そしておよそ10年が経った今年、NGS現場の会という(その名のとおり)基礎から応用、実験からインフォマティクスまでNGSを扱う多彩な人々が集う研究会に招待していただき、初めてこの研究会に参加することが出来ました。遊び心にあふれた魅力的な会で、参加することができて良かったです。この会は2011年に発足し、回を経るごとに参加者も増えていき、第5回である今回の参加者はなんと860名!という大盛況っぷりだったそうです。NGSはわずか10年ほど前に登場した技術であるにもかかわらず、多くの研究者に愛される有用テクニックとして定着していることを改めて感じました。

今回のNGS現場の会で話題になっていたテーマのひとつが、いわゆる「次々世代シーケンサ」である、nanoporeシーケンサMinIONです。一言で原理を説明すると、膜に小さな穴(nanopore)があいていて、そこにDNAやRNAのヌクレオチドが通過する際に流れる電流を測定することで、配列を決定するといったものになります。こういった原理であることからカメラ等を必要とせず、驚くほどの小型化に成功しています(私の手のひらの上のMinIONの写真をのせてみました)。単純に手のひらサイズのシーケンサ!というポイントもわくわく心をくすぐりますが、PCRベースではないことから、読める配列の長さに理論上制限がない(むしろ制限はどれくらい長いDNAを抽出できるかという研究者の腕のほう)、というのも大きな特徴です。手軽にロングリードを読むことができれば、トランスポゾンやリピート配列を研究対象としている私にとってとても有用だと思い、研究会から戻って早速シーケンシングにトライしてみました(早速トライできてしまうほど導入ハードルが低いのも魅力のひとつです)。大きな期待を抱いて行った初めてのMinIONシーケンスではパンフレットにあったスループットの1/10程度しか得られずアセンブルも期待通りとはいきませんでしたが、なかには400k超えのリードも得られ、ながーーい配列のfastqファイルをみたときはテンションがあがりました(笑)。改善ポイントもいくつか見えてきたので、またリベンジしたいと思っています。

新しいテクニックを導入する場合には、それによって「知りたいこと」を効率的に理解することができるかというところを意識しながら進めることが大事だと思っています。一方で、こうした新しいテクニックに触れてみること自体に、純粋にトキメク部分もあります。新しい知見や技術を的確かつ積極的に取り入れつつ、着実に研究を進めていく研究者を向こう10年の目標のひとつに掲げ、日々精進していきたいと思います!

岩崎 由香

慶應義塾大学 医学部分子生物学教室 専任講師
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