2018年04月10日(火)

EMBO meeting @ Weismann Institute (2)

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二日目は朝の9時から夕方6時まで17演題みっちり。KeystoneやGordonと違って午後の休憩時間がないこのスケジュール、もうそう若くはない時差ぼけの身にはこたえるなあと思っていたのですが、今回気づいたのはイスラエルと日本の時差はそれほどないということ。夏時間だとたった6時間。これぐらいだと時差ぼけはそれほどでもないすね。オーストラリアは時差なし天国でしたが、こんだけクリアーな頭で欧州圏のミーティングに参加することができるというのは新しい発見でした。タイムゾーンもどストライク。ミーティングトピックもどストライク。今日も楽しくレッツゴーです。

small RNAのからみでは、AgoにロードされるmiRNAの特異性について複数の人のトークがありました。

線虫でも、マウスでも、Agoファミリーは複数あるのですが、同じ細胞で発現していても、別のmiRNAをくわえ込んでいると考えた方が合理的に表現型を説明することができる例が多々あるようです。細胞内の局在が違うためにそういうことが起きるのか、もしくは生化学的に異なる性質を持っているからなのか、それは色々なケースでよくわかっていないらしいですが、とても興味深い話です。ビジュアル系大好きな僕としてはAgoの局在を調べた顕微鏡写真のデータがないのがちょっぴり物足りないところはありましたが、、、

lncRNAの方の話では、クロマチンのルーピングを制御して遺伝子発現制御をするlncRNAの話がメジロ押し。

すでに論文になっているところとしては心臓形成に必須なHand2の上流から発現しているUpperhandとか、膵臓のbeta細胞で重要な機能を果たしているPdx1の上流から発現しているPLUTOの話とかがあるわけですが、いずれもcisに働いています。このタイプのlncRNAの機能解析では、DNA FISH等を使ってlncRNAの遺伝子座とお隣のタンパク質の遺伝子座の位置を可視化してその位置関係を調べるというアッセイがよく行われるのですが(大体、lncRNAが発現するとそれらが集合する、ノックアウトするとこの集合が阻害される、というパターン)、「そのKO、ただ単にシスのエレメントが潰れるだけなんじゃないの?」というツッコミは常にあるわけで、今だに決定打となるようなノックアウトモデルは無いようです。このカテゴリーのlncRNAに関する報告はポスターセッションでもいっぱいいっぱいあって、今猛烈にホットな分野です。個人的にはホットな分野を見るともういいや、という気分になってくるのも事実で、トラに踏まれて死すは稀、cisよりtrans好みです。

あと、技術的に面白かったのは、特定の細胞で発現しているmiRNAを同定する話。もう論文になっていますが、植物のsmall RNAの3'末端はHEN1の働きでメチル化修飾を受けているのに対してマウスのmiRNAの3'側はメチル化されていないことに目をつけて、マウスの特定の細胞でHEN1を発現させ、その後過過ヨウ素酸による酸化開裂処理をするとメチル化されたmiRNAの3'のみが守られるので、あとはそれにみアダプターをligationさせてシークエンスするだけ。Luisa Cochellaさんのお仕事。当領域の鈴木勉さんのお仕事もそうですが、有機化学と分子生物学がうまくミックスした仕事は美しいですね。

中川 真一

北海道大学 薬学研究院 教授
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