カバーグラスには変なものがいっぱい付いているので、教科書的には硝酸やら塩酸やら王水で洗え!ということになっています。でもこれ、「Qiagen使っただろう?気合が足りねえんだよ。超遠心使え、超遠心。」という某Oさんの迷言と同じく、なんてことはない。体育会系の一回生への理不尽な要求並みのただの伝説。「普通の洗剤で良いんですよー」という神大は冨樫君の言を信じて洗剤を試したところ、実際バッチグー、というのが体感です。5倍ぐらいにSCAT20をうすめて、
なんだかレーザーラモンHG(古っ!)なみにすごい勢いで回ってるみたいですが、実際は60rpmぐらいです。
洗い終わったら、水道水で泡が出なくなるまで徹底的に洗って(10回ぐらい?泡出ない、これ大事)、そのあとRO水でシャカシャカ3回。
ビーカーから取り出すのは面倒くさいので6cm dishにエタノールごと移すと取り出しやすい。ピンセットはINOX#7が圧倒的に使いやすい。
カバーグラスは垂直に取り出してアルコールをなるべく切った方がすぐにエタが燃え尽きてくれる。
こ、この瞬間がたまらない!!
立てかけてwellに入れると、燃え残りのエタノールやら燃えてできた水分やらがすぐに乾いてくれる。全部入れたらplateごと揺すって、こかせば良い。
通常の抗体染色であれば、このままwellに細胞を巻き込めば、染色できます。
ただ、in situ hybridizationの時は「必ず」PLLコートをしましょう。大事な大事なサンプルが剥げ落ちてとても悲しい事態になります。まあ大丈夫だろうと横着して何回か、いや何回も痛い目にあってます(なぜ学習しないのだろう??)。PLLにはいろいろな分子量がありますが、分子量が大きければ大きいほど細胞接着が良いという伝説は誰が言ったのだろう、、、ともあれ、SIGMAであればP1300のMW150K-300Kを使っています。100mgの新品の容器に水を突っ込んでトータル100mlの1mg/mlのストックを作り、それらは適宜15/50ml tubeに分注して凍らせストック(滅菌不要)。100µg/mlのworking solutionも凍らせてストック可能です。水でなくホウ酸バッファーを使う人もいるようですが、超遠心回せ、ぐらいの伝説かと。。。
さて、ここで洗剤洗浄の効果がてきめんに現れます。PLL(100µlぐらい)をカバーグラスにのせた瞬間すーっと広がれば大成功!洗っていないカバーグラスでは全然広がりません。
洗浄済みカバーグラスにPLLをのせた時。気持ち良いほど広がってくれる。
洗浄していないカバーグラスにPLLをのせても思うように広がってくれない。
ここでは写真を撮るために6cm dishに入れていますが、実際は12wellに入れたカバーグラス上に100µlのPLLを乗せてo/nでやればオーケー。PLLでコートした後は、DWで2、3回洗っています。アスピレーターで吸って乾かしてハイ終わりというツワモノの同僚もかつていましたが、なんか気持ち悪いですね。細かいところが気になってしまうので、裏に入り込んだPLLも洗いたい、洗わないと気持ち悪くて夜も寝られないという方には、18Gのシリンジの先っぽをちょっと曲げたツールが便利です。シリンジは滅菌されていますから、12wellのフタなりwellの間なりに押し付けて鷹の爪のように(植物でない方)曲げてやって、鷹の気持ちになってえいやっとネズミをすくい上げるようにカバーグラスの向こう側の端を引っ掛けると、いともたやすくカバーグラスを持ち上げることができます。なので、PLLを吸って、DWを入れて、持ち上げて、吸って、入れて、持ち上げて、吸って、入れて持ち上げて、、、相撲の間合いのように何回も繰り返したくなってしまいますが、2、3回やれば十分。さっさと細胞を巻きこんでしまいましょう。このツールは、カバーグラスを持ち上げるのに四苦八苦するときにはとかく重宝します。
18Gニードルの先っぽを曲げてやる。これで引っ掛ければカバーグラスはいとも簡単に持ち上がる。
んー。このくねりがたまらん。これで引っ掛ければどんなにしつこく皿に這いつくばったカバーグラスもいとも簡単に持ち上がります。
こんな感じ。
次回はTDEマウントをするときのちょっとしたコツを紹介します。