2014年10月18日(土)

蛍光1分子観察

投稿者:

紆余曲折な研究人生を歩んできたのですが、初めてRNAに関わった仕事を紹介したいと思います。

博士課程のテーマの一環として取組んだのが、細胞内におけるmRNAの蛍光1分子観察でした。当時は、阪大の柳田敏雄研で師匠の船津隆先生を中心として、水溶液中の蛍光1分子観察が試験管内(顕微鏡下の観察チャンバー内)で、世界で初めて成功し、1分子生理学の黎明期でした。次は、細胞内、という事で、新設の船津研では、試験管内におけるシャペロニンGroELの蛍光1分子観察(当時:東工大の吉田賢右先生、田口英樹先生との共同研究)と平行して取組んでいました。研究室の立上をしつつ、新規テーマ2つの立上という事で(シャペロニンの方は当時4年生だった上野太郎さんと一緒に立上)、てんやわんやしていた記憶があります。

試験管内と比べて細胞内は複雑で、それまでずっと試験管内の実験しかした事がなかった身としては、予想外な事だらけでした。また、RNAの取扱にも慣れておらず、分解しやすいという事で、初めはおっかなびっくり実験をしていました。4年生が作ってくれたDEPC処理水がむしろ分解を促進するといった笑い話もありました。そのうち、谷時雄先生(当時:九大。現:熊大)の御協力を得て取扱にも慣れ、結構いい加減に取り扱っても良いと分かり、研究は進展しはじめました。

実験は、mRNAの核内運動が、モーター蛋白質による能動輸送なのか、あるいは、ブラウン運動による拡散運動なのかという点を蛍光1分子観察でmRNAを1本ずつ解析する事で明らかにしようというものでした。初めは、内在性のmRNAを観察するために、蛍光標識したアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた観察を行いましたが、やってもやっても差が出たり、出なかったりという事で、結果が安定せずに苦労した記憶があります(当時は天然のオリゴヌクレオチドを用いていましたが、現在は2'OMe修飾オリゴヌクレオチドを用いる事で観察可能)。谷先生のアドバイスもあり、試験管内で合成した蛍光標識mRNAを観察する事で、mRNAは核内を核酸運動で動いている事を明らかにする事ができました。色々と苦労はしましたが、現在の糧となっているプロジェクトで、指導教官の船津高志先生、共同研究者の谷時雄先生には感謝しております。

本領域では、機会があれば、生きている細胞核内でのイメージングに再チャレンジできればと思っており、よろしくお願い致します。

多田隈 尚史

大阪大学 蛋白質研究所 助教
▶ プロフィールはこちら

このカテゴリをもっと見る « 顕微鏡 Suppressor tRNA »

ブログアーカイブ

ログイン

サイト内検索