2018年11月12日(月)

JAJ RNA 2018レポート(2)

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東京大学薬学部、生理化学教室(北川研究室)所属の伊藤慶と申します。11月5日から7日にかけて開催された国際学会『JAJ RNA 2018』に参加させていただきましたので、ここに報告いたします。

会場は北海道札幌市にあります、北海道大学です。事前に調べたところ、昨年の初雪は10月中だったとわかり、それほどまでに寒いのかと「冬」を覚悟していました。念のため使い捨てカイロまで用意したのですが、実際のところは日中過ごしやすい気温で、また銀杏をはじめとする紅葉も美しくて、札幌の「秋」を楽しむことができました。

私はいま学部の4年生で、この学会が初めてのポスター発表となりました。研究の内容は、スピンドル上に局在するRNAを次世代シーケンサーで解析し、CRISPR/Cas9を用いてその発現を抑えることによって、正常な二極の紡錘体形成に必要なlncRNAを包括的に探索するというものです。研究室に配属された4月からの半年の研究成果を研究者の方々に説明するという初めての経験に向けて、自分なりに一生懸命準備をして参りました。私のポスター発表は一日目の午後であり、直前の昼休みは緊張の為に数時間にも感じられ、弁当が喉を通らないような気分を味わいました。

そして13時15分から、Poster sessionが始まります。研究者の方々には次々と私のポスターを見に来ていただき、「本当にlncRNAであるとはどう確かめるのか」「周期による発現量は確認したか」「候補同士の相同性はあるか」「タンパク質をKnockoutしても同様のPhenotypeはでるか」「パラスペックルではNEAT1が重要だが、中心体では重要なRNAが幾つもあると考えているのか」等、鋭いご指摘の数々をいただきました。ほとんど休みなく説明と質疑応答を続けたためか、あっという間の90分でした。研究者の皆様にご意見を頂いて議論ができた90分は、とても有意義な時間であったと考えております。ありがとうございました。

Sessionや皆様のポスターも大変に興味をそそられました。miRNAやpiRNA、スプライシング制御、RNA修飾といった生体内RNAの機能から、発現制御やDatabase, UPA-seqといった技術まで、その内容は多岐に渡っており、RNAの重要性や未知の可能性を感じるとともに、用いられた実験手法や考え方、発表の仕方を学ぶことができました。その中でも特にNEAT1などのarcRNAについて、RNAもタンパク質と同じように構造の中で相互作用して、構造を支えているということは面白いと思います。mRNA, tRNA, rRNA, miRNA, piRNA, arcRNA, circRNA, snRNA, snoRNA, siRNAなどRNAの多様な働きに驚かされ、最初の生物がRNAだけでできたというRNA-world仮説が思い出されました。また7mer RNAとタンパク質の親和性を調べたり、RNase処理やAnti-sense oligoで影響を受ける構造体を調べるといった実験手法は印象に残りました。東京に戻ってから早速、学びを生かした実験を行っています。

二日目の午後には、Excursionに参加して大倉山へと訪問致しました。かつて札幌オリンピックで使われたというスキーのジャンプ台は圧巻でした。このExcursionでは研究者の方々と知り合うことができて、ジンギスカンやビールも美味しくて、紅葉や夜景も美しく、大変充実した時間を過ごせたと思っております。

最後になりますが、JAJ RNA 2018の関係者の皆様方に感謝申し上げます。

伊藤慶

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