2016年08月29日(月)

8M Urea

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昨今,格段に酵素やキット類が充実して,誰でも簡単に実験ができている気がします。例えば,プラスミドベクター作り一つとっても最近は,in-Fusionなんかが出てきて,簡単に目的の遺伝子を目的の部位に挿入することができます。一昔前は,プラスミドマップを眺め,どの制限酵素を使えばよいか考え,頭を悩ましていました。また,制限酵素処理したプラスミドや遺伝子断片は,アガロース電気泳動で分離し,ゲルから目的のバンドを切り出し,透析チューブを使って抽出するなんてこともしてました。現在では考えられませんね。このようなキット全盛の時代とともに,諸先輩方が持っていた「私の技」というのも最近めっきり減ってきた気がします。でも,今回の皆さんの投稿を拝見し,まだまだいろいろと「私の技・カイゼン術」があるもんだなあと感心いたしました。

で,自分はどうなんだろうか?と考えました。そこで,一つ思い浮かんだのが10数年前のバークレイ留学当時から変わらず行ってきた「クロマチン精製」です。「技」とまでは言えませんが,他のラボではあまりされていないかと思うのでご紹介したいと思います。

最近は,ChIP-seq解析などが流行りで,どこのラボでも手軽にChIP解析が行われていて,また多くのカンパニーからいろいろなChIPアッセイキットが発売されているので,かなりルーチンな実験になってきた気がします。(やっぱり,キットかっ!)でも,非特異的なDNA-タンパク質複合体が取れてきたりして,時にノイズとして現れ問題になります。この非特異的なDNA-タンパク質複合体が結構厄介で,これを取り除くために,cross-linkなどの条件検討を含めた多くの最適化実験が必要になってきます。そもそもこの非特異的な相互作用は,クロマチンの持つ強い静電荷に起因していると考えられ,静電的なタンパク質-タンパク質,タンパク質-DNA相互作用を誘発します。そのような非特異的な静電的相互作用を簡単に解消し,バックグランドノイズの少ないクロマチン精製法として,長年私が行ってきた方法を紹介したいと思います。プロトコールは至って簡単で,1%ホルムアルデヒド(メタノールフリー)で固定した細胞を界面活性剤(SDS)入のバッファーで溶解し,核だけの状態にします。その核溶液を8M Ureaの溶液上に載せ,超遠心(30,000rpm x 16hours)するだけです。するとチューブの底に,まるでコンタクトレンズのような透明で綺麗なクロマチンペレットを取ることができます。これまで私は,3C(Chromosome Conformation Capture)アッセイなど,いろいろなクロマチン構造解析にこの8M Ureaを使ったクロマチン精製を使ってきましたが,いずれもとても良好な結果を得られています。8M Ureaは最強です!ぜひお試しください。昨今誰も使わなくなった超遠心機を一人で独占してクロマチン精製に使っている今日この頃です。

堀家 慎一

金沢大学 学際科学実験センター 准教授
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