2019年01月12日(土)

振り返れば

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最近はミジンコを使った研究も少し状況が変わり、いわゆるdescriptive な研究から脱却し、ゲノム編集技術により遺伝子機能解析を行えるようになってきました。この技術を用いてlncRNA、DAPALR の研究を進め、ここ5 年は、振り返ればDAPALR がいる、と言っても言い過ぎではないような気がしています。昨年発表したDAPALR 論文の紹介は、ブログの研究成果紹介のところに記載させていただきましたので、少し重なってしまいますがここ5 年の私のRNA 研究を振り返ってみたいと思います。

5 年前の2014 年はRNA 学会に入会した年であり、私のRNA 研究元年といっても良いかもしれません。当時既に私たちは、オオミジンコで偶然見つけた「オスの性決定遺伝子dsx1 の5’ UTR のみでオス化が誘導される現象」に取り組んでいました。dsx1 の5’ UTR がdsx1 の上流から転写されているlncRNA、DAPALR の一部に含まれ、lncRNA の作動エレメントとして機能しているらしい、ということまでわかってきていましたが、DAPALR の全長や、どのようにオス化を誘導しているのかまで詰めきれていませんでした。この年の名古屋で開催された第16 回日本RNA 学会年会の特別講演で西村暹先生が話をされ、研究で大事なことの一つとして仰っていた「予想外の発見を捨てない」という言葉が心に響き、ミジンコで見つけたおもしろRNA、DAPALR 研究のモチベーションがアップしたことを今でも鮮明に覚えています。

翌年2015 年は本新学術領域に公募班員として入れていただき、私のような門外漢がRNA 研究を進展させる良い機会を得ることができました。班会議での研究発表では私が足りていないと思っていた点、考えてもいなかった点をズバズバと指摘していただいて、やるべきことが明確になりました。その一つが、DAPALR の3’ 末端の決定でした。2015 年は、この点に焦点を当て進めました。平日、日中は大学の業務、教育でやるべきことが山ほどあり研究が断片的になってしまいます。このため、ゴールデンウイーク、お盆休み、年末年始などの長期休暇がまさに絶好の研究のチャンス。2016 年の年始にようやく3’ 末端の決定に至りました。2016 〜2017 年頃には、研究成果紹介で記載したようにDAPALR 研究と並行して行っていたdsx1 の発現を可視化できる個体の作出や、dsx1 の活性化因子の探索の研究に進展があり、これらの研究とDAPALR 研究を合わせることで、DAPALR の生合成と機能についての研究成果をまとめることができました。そして、2017年後半から論文投稿を開始、ついに2017 年の年末31 日に投稿した雑誌に2018 年春に論文が受理されました。

2017年に再度本領域に入れていただき、現在は、DAPALR がどのように合成され、dsx1 活性化をしているのかという、次の課題に取り組んでいる真っ最中で、少しずつ面白いデータも出てきました。春までにはまとまりそうでないことが大変に心残りですが、今後RNA 研究をもっと面白く展開できるのではと、ワクワク・ドキドキ感は5 年前と変わっていません。

加藤 泰彦

大阪大学 大学院工学研究科 助教
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