2016年09月10日(土)

初恋Gomafu(2)

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あばたもえくぼとはよく言ったもので、見た目表現型が全く出ないGomafuノックアウトマウスがむしろどんなプロジェクトよりも可愛くなってくるというのは初恋のなせる技。というかこれは悪女につかまったという方が良いのか、、、

ノックアウトマウスがviableかどうかは、通常ヘテロ個体同士の掛け合わせをして生まれてきた個体をgenotypingをして調べますが、それまで待ちきれず、Gomafu KOのヘテロ個体を掛け合わせてドキドキしながら妊娠14日目の胎児をダイセクションした時の気持ちは今でも忘れられません。見た目異常を示すものはゼロ。まあ、ホモ個体がいないこともあるもんね、あの時はGomafuのノックアウトであるホモ個体がいなかっただけだよね、と自己暗示をかけつつ、genotypingしたら非情にもホモ個体がなんといるではないですか。うーむ。あのembryoがホモ個体だったか、、、

でも、固定されたembryoを眺め、この子はいい子なの。うん。育ったら表現型出してくれるよね。ごめんねこんなに早く固定して。と、親バカというかなんというか。現実を認識していないと言えばそうなのですが、表現型が出ないことよりも、初恋の遺伝子のノックアウトマウスが今ここにいる、ということの喜びの方が大きかったような気がします。2011年に京都で行われた国際発生生物学会でパラスペックルを発見したArcha Foxさんが来日された時に、パラスペックルの骨格ノンコーディングRNAであるNeat1のノックアウトマウスをちょうど僕のラボで作っていたので彼女がラボに立ち寄ってくれたのですが、「ちょっと馬鹿げたお願いなんだけど聞いてくれる?あなたのラボに行った時に、Neat1のノックアウトマウス、触っていいかしら?」とのメール。それまでに見た目の表現型はないことは伝えていたのですが、ノックアウトマウスを手に取り、まるで我が子のように慈愛に満ちた眼でじっと飽きずに眺めていたArchaさんの表情は忘れられません。僕も、Gomafuのノックアウトマウスが初めて生まれてきて手を取った時には、同じ眼をしていたに違いありません。表現型云々よりも、ああ、やっとここまで来た、という感慨。

とはいえ、感慨に浸っているだけでは食っていけません。全く異常がないというのはそれはそれで重要な情報ではありますが、やはり、何かしらの表現型が出てこないと「どんな頑固オヤジでも孫の顔を見りゃ」が実現できない。Gomafuは神経細胞特異的に発現しているノンコーディングRNAだったので、とりあえずすぐにできることとして、

ノックアウトマウスの神経系の組織学的な解析
ノックアウトマウスのGomafu発現神経細胞における各種核内構造体マーカーの局在チェック

などをやってみたのですが、これがまた微妙。あっ!これ表現型なのではないか!とぬか喜びすることも度々。その度に、その筋の専門家にコンタクトして、これってどうですかねえ。表現型ですかねえ。うちのGomafuよろしくお願いします!と、なんだか芸能界のマネージャーのような研究活動・営業活動をしては、いやいや、こういう実験してみないとわからないですよ、とアドバイスをもらって、実際やってみて自分の浅はかさを知る、ということをひたすら繰り返していました。HEで濃く染まる神経細胞の謎とか、脊髄の運動神経のL5-L7のrootが細くなる謎とか、おとぎ話が次々と、、、いっその事、n=3にしてその後の解析見なかったとにしちゃおうかと思ったことも、、、いや、ないですそんなこと。ないです。ないです。はい。(あったと言ってる)。

と、モヤモヤした日々を送っていたのですが、当時、今では全く縁がなくなってしまった神経関係の特定領域に公募班で参加しておりまして、その領域のSNSで、同世代の宮川剛さんが同世代とは思えぬパワーでノックアウトマウスの行動解析をシステマティックにやっておられることを知りました。宮川さんのSNSでの振る舞いからそれまで感じていた行動解析への心理的な高い壁がベルリンの壁よろしく一気に崩壊し、もうすっかり板についた「うちのGomafuをよろしくお願いします」を発動してGomafuの行動解析実験をすることになりました。

当時の宮川さんのシステムは、共同研究で人件費分の委託研究費が出せるのであれば丸投げの解析、それが無理であれば解析をする人を派遣してください、ということで、no choiceで後者。GomafuをクローニングしたS君を岡崎に送り込むことになりました。これもまだ初恋の熱冷めやらぬ2006年のことです。

(つづく)

中川 真一

北海道大学 薬学研究院 教授
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