2018年11月24日(土)

JAJ RNA 2018レポート(3)

投稿者: 林 立平

初めまして、オーストラリア国立大学の林です。今年の初めからPIをしています。
11月5日から7日まで北海道大学医学部で行われた、第二回JAJ(Japan-Australia Joint) RNA meetingにオーストラリア団の一員として参加してきました。

この学会は4年前にシドニーで行われた第一回を引き継ぎ、今回は日本側のノンコーディングRNAネオタクソノミに支援して頂く形で実現したと伺っています。

端的に言って、二国間の交流とは思えないほど多岐に渡る分野の方達の発表を聞くことができて、大変実りの多い学会でした。
オーストラリア側の基調講演では、Greg GoodallがmiR-200がEMTを引き起こすことを示した後、そのターゲットであるスプライシング因子Quakingがどのような分子機構でcircular RNAを産み出すのか議論されました。帰りの道中、FISHで、まさに浸潤しているがん組織におけるmiR-200の発現パターンを捉えたスライドの話になり、EMTとがん転移の相関を分子的に示したまれな例であり、地味なようで大事なデータなんだとGregが言っていたのが印象に残っています。

日本側の基調講演では鈴木勉先生(東大)がtRNAの修飾の話から始められ、後半はmRNAのメチル化修飾の話をされました。緻密な実験はさることながら、アプローチが徹底的で短絡的な見返り(目に見える表現型)に頓着しないでメカニズムを突き詰めるところがオーストラリア側は度肝を抜かれたと思います。

その他、未発表のものか分かり兼ねる所があり、多少の制限があると思いますが、印象に残っている発表をいくつか挙げると、SpCas9の結晶構造から推察してアミノ酸塩基を改変し、PAM配列の認識にNGGの三つ目のGがいらなくなったと言うお話(東大、西増さん)、small RNAがロードされていないArgonauteの分解機構についてのお話(東大、泊さん)、Arabidopsisでイントロンにある単純配列のリピートがsiRNA生産を介した遺伝子発現抑制に繋がると言うお話(Sureshkumar Balasubramanian:小学生のお子さんも参加されていました。)、スプライシング因子のノックダウンがミススプライシングと言うよりはもっとgeneralなストレス応答を引き起こすというお話(奈良先端大、大谷さん)、進化的にヒトにユニークなhnRNPのisoformが、種特異的な択一的スプライシングの可塑性に寄与していると言うお話(Rob Weatheritt)、RNA輸送因子が一転してヘテロクロマチン形成に関与していると言うお話(慶応大、岩崎さん)、シンプルな生化学的手法で、タンパク質と複合体を形成した機能的lncRNAを選択することができると言うお話(北大、中川さん)などがありました。
また、複数の口演でlncRNAとタンパク質の高次複合体の形成メカニズムと機能に関して盛んに議論が行われました。今まさにホットな所だと言えますが、実は日豪の研究者の長きに渡る研究が分野をリードしている部分もあるだろうと感じました。

ミーティングは終始和やかな雰囲気で行われ、天候にも恵まれました。二日目の午後をリクリエーションに充てられたのはオーストラリア側からも好評で、集中力を持続することができました。写真はキャンベラからの一団でディナーに行った時のものです(左からThomas Preiss, Eduardo Eyras,私,Tamás Fischer)。地元の人たちが好みそうな雰囲気のお店で、畳貼りで足を入れる所がなく、辛いと言われましたが、知らん!と言っておきました。最後になりましたが、今回JAJ meetingで口演の機会を頂き、ありがとうございました。


オーストラリア国立大学、林 立平

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