このことを一番実感したのは、1ヶ月ほどシアトルの研究室に留学した際のことでした。その研究室の日本人の方が下宿先を手配してくださったのですが、その方と話すと実は母の仕事上の上司と知り合いであったということが分かり、非常に驚きました。その研究室を決める際には、学部生時に所属していた研究室の教授と話し合って決めた場所で全く無関係なはずなのに、全く違う2つのつながりがアメリカで1つになったということが留学中一番印象的でした。(もちろん、そこで行った網膜のイメージングもとても面白かったのは確かです。) その際に、この2つのつながりにはそれぞれ「ハブ空港」のような存在―お世話になった教授と母の上司―がいらっしゃらなければ、存在しなかったのではないかとも考えました。
この例と同様に、やはり研究者の世界はとても狭いように思います。1つは論文、もう1つは今回のサテライトミーティングや学会などが開催されるということが寄与しているのではないでしょうか。
今回サテライト開催にあたり、Ingridさんを後輩のLiuくんととともに羽田空港にお迎えにあがりました。その際、目の前の論文に集中するだけでなく、これからの道筋・キャリアプランを常に考えなさいと仰ったことが印象的でした。また、とても精力的な方で、土曜日に東京にいらっしゃり、月曜日にミーティング、火曜日にはドイツに帰国されるというタイトなご予定にもかかわらず、東京で行くべきところはどこかと聞かれ、僕らが思いついた、浅草、東京スカイツリー、西洋美術館、皇居など様々なところに行かれたと月曜日のミーティングの際に伺いました。
サテライトミーティングの中では、私はタイムキーパーという役割を仰せつかりました。通常タイムキーパーというと、ストップウォッチとにらめっこというイメージがありますが、ラボをハックしている泊さんのおすすめによって領域で購入していただいたマシーンのおかげで大分楽をさせて頂きました。
この信号機のようなマシーンには、予め発表時間が登録されていて、例えば12分発表、3分ディスカッションというタイムスケジュールでは、10分間は緑、次の2分は黄色、ディスカッションタイムは赤、時間切れになると赤が点滅といった具合です。また、この色の変化は、タイムキーパー、演者、座長の3者で自動的に同期されます。この機械を利用することで発表が始まる際にきちんと設定だけすれば、後は発表をじっくり聞くことが出来ました。今回のミーティングでは、1日に23人もの方々にご発表頂いたので、1人につき15分~30分というタイトなスケジュールでしたが、全体の進行が滞り無かったことに感謝申し上げます。
発表自体に関しても、先のIngridさん、泊さんの元ボスのPhillipさんを初めとして、RNAに関する著名な先生方のお話を伺うことができました。同時に他の会場などがあったわけではないので、自分たちとやや研究対象・分野が異なるお話を伺うこともでき、特に(今回の原稿を書く機会を頂いた)中川先生のお話の中で、超解像顕微鏡を用いるとncRNAの局在が構造体の外側と内側とで区別できるようになったというのは、幼稚な感想で恐縮ですが、面白い! 技術革新は凄い! と思いました。また、研究室の先輩である岩崎さんやOliviaさんなど若いPIの方々のお話を伺い、自分もいつかこのような舞台で話せるようになれるように不断の努力をしてまいりたいとも感じました。
このミーティングで、まだまだRNA分野に疎い自分でも、全体像のようなものを垣間見ることができ、Ingridさんのような著名な研究者と直接話す機会も得て、すこし「世界を小さく」することができたように感じおります。
参加された皆様の世界も良い意味で「小さく」なりましたでしょうか? 微力ながら運営に携わらせて頂いたものとして、もうそうであれば存外の喜びです。
最後に、このような機会を頂きました、廣瀬先生、中川先生、そして泊さんに深く感謝申し上げます。