しかし、この甘い考え方は長く続きませんでした。その理由の一つは、解析がルーチン化してくると、パターン解析にはまり飽きるということでした。機能が未知であっても、PAR-CLIPをやってみると大概はスプライシング制御やRNAの安定化に関与しているものが多く、標的さえ分かってしまえば、その後の詰めの作業は一緒です。理研のある方が留学先をPAR-CLIP工場と言われていた気持ちがよく分かりました。もう一つの理由は、PAR-CLIPをやってみると、認識モチーフはU-richとかAU-richとか単純な配列になるタンパク質が多いということでした。また、FUSのようにモチーフがはっきりしないようなタンパク質も多く、一次配列だけではタンパク質による制御は語れないのではないかという思いが強くなったことです。東大の木立さんがよく言われているように、周囲に二次構造が埋もれていたり、実際には高次構造を認識しているのではないかと思われるのですが、この辺りはPAR-CLIP法だけでは詰め切れない訳です。実際のところ、同じような配列に結合するRNA結合タンパク質は、細胞の中でどうやって標的を振り分けているのだろうかと考え出すと、すでに気持ちはポストCLIPに移行気味で、時空間制御を解析するいい方法はないかと思案する日々です。CLIPを通して一昔前には不可能だったことが可能となり、そしてまた新たな課題が明らかになってきたところではないでしょうか。RNA結合タンパク質の協調と競合は益々奥深いテーマとなり、ncRNAの機能を明らかにする上でも更に深化を遂げるべきだと思います。
本領域では、班会議などを通して多くのことを学ばせていただきました。今後のご発展を心より祈念しております。