2017年12月04日(月)

分生&TRCへGO!

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今年も分子生物学会(今年はConBio2017)の季節がやってきました。これだけ大きな学会になると、アポ無しにディスカッションするのは至難の技。ディスカッションを深めて研究のアイデアを練るというよりは一方通行で情報を流すだけ、単に発表したという事実を作るだけの学会なんていらない、といった極論もあるようですが、個人的にはとても大好きな学会の一つです。そもそも、RNAに興味を持ち始めたのは2004年の年会のワークショップで大野さんや稲田さんの発表を聞いたのがきっかけ。2007年の年会休憩時間にパシフィコ横浜の3階の廊下ですれ違った当時入江研の長谷川さんに最近どうしてるの?と話かけてなかったらXistの染色体局在を調べることはなかった、論文も出ることはなかった、すなわち今頃一家路頭に迷っていたでしょうし、昨年は大塚さんのGONADトークにハンマーヘッドリボザイムで頭を殴られたかのような刺激を受け、今年一年その系の導入にてんやわんや、配属さればかりの学生のような新鮮な気分で過ごすことができました。学会に行くのは、Amazonで本が買えるのに、本屋にぶらり寄りたくなるのと似ているかもしれません。目的があっていくのではなく、偶然の出会いを求めて。

あと何と言っても巨大学会の最大のメリットは、それなりに名が知れているということ。論文を見て、この人すごいなあ、面白い人だなあ、と思っても、なかなか知り合いになれるものではありません。実際、かつて、すごい!面白い!と思った神経発生の研究者達にファンメールを送っていた時期もありましたが、まあ、みなさまガン無視でした。ところが、「あの研究、すごく面白かったです!分生でワークショップやるんですけど、是非おいでいたけませんか?飛行機代(エコノミーですが)は持ちますんで」というファンメールですと、どこの馬の骨かわからないような僕が声をかけてみても、意外とお返事がいただけるものです。また、これだけ巨大な学会になりますと同時期に同業者の海外の研究者も結構来られるもので、せっかくなら関連ゲストを一堂に集めてもう一つミーティングを開いちゃえ、というコバンザメミーティングTokyo RNA Club冬の定例会は、時間の限られた本体分生のワークショップよりも盛り上がっている感もあります。今年は廣瀬さんと僕のワークショップではあのNoradの発見者、最近だとCRISPR-Cas9のライブラリを駆使してmiRNA-Agoのリン酸化サイクルを発表されたJosh Mendellさんが来られます。また、RNA学会共催の鈴木勉さんオーガナイズのシンポジウムでは、SpinachからRNA修飾まで幅広い芸風をお持ちのSammie Jaffreyさん、m6A修飾がらみの仕事を連発して存在感急上昇のHe Chuanさんが来られます。どちらも学会最終日の土曜日の枠になります。

ちなみに、論文でしか知らない人でも、最近はネット上にいろんな動画が転がっているもので、事前に聞いておくととても良い予行演習になります。特に、ネイティブの方の英語は耳慣れない発音でいきなりガツンと来られると全くついていけなくなってしまうこともあり、ある程度その人の話し方に慣れておくと、ずいぶん違うものです。先日の内藤カンファレンスでもDavid Tollerveyさんのスコットランド?アクセントの発音、非ネイティブとしては(ネイティブでも?)かなり難易度が高かったのですが、事前に動画で慣れていたので、ずいぶんと助かりました。というわけで、今回のRNA関連海外ゲストと方々のYoutube講演をちょっと集めてみました。

まずはJoshさん。今回は分生ではAgoリン酸化の話を、TOKYO RNA ClubではNoradの話をされるようですが、こちらのUCLAのチャネルで両方のお話を聞けます。今年の1月にアップロードされたものなのでかなり最新の話ですね。

また、ちょっと前、2014年になりますが、KochInstituteMITのチャネルにもJoshさんのセミナーが登録されています。こちらはmiR135/145のKOマウスとかの話です。

おつぎはSamieさん。講演の動画はなかったのですが、The New York Academy of Scienceの受賞インタビュー動画がありました。ちょっと短めですが、RNA全般についての話、メンターの話、など。幅広い興味を持っておられるSamieさんの人柄がうかがえます。

ちなみに、数年前メルボルンであったミーティングで僕は4.5SHというマイナー中のマイナーncRNAのポスターを出していたのですが、すごく熱心にポスターを見回っていたSamieさんが足を止めてくれ、かなり突っ込んだディスカッションをしてもらったのをとてもよく覚えてます。招待講演でぱっと来てぱっと帰ってしまう人も少なくない中、この飽くことなき興味が彼の仕事につながっているのだなあと、思った次第です。

Samieさん、Weill Cornell Medicineのチャネルにもインタビュー動画があります。こちらは最先端医療の話で、内容的にはえっ?さっきの人と同じ人?という感じですが、同じ顔、同じ声、ちょっと顔を傾けて話す癖も同じ、まごうかたなきSamieさんです。日産スタジアムでも東京ドームでもヒーローインタビューを受けてしまうのがSamieさんのすごいとこです。

He Chuanさんも講演の動画は見つけられなかったのですが、こちらもインタビュー動画があります。インタビュアーのおねえちゃんのナイーブな質問に慈愛に満ちた笑顔をたたえながら冷静に答えるChuanさん。格好いいですね。

というわけで、これらの動画で耳慣らしをして、ConBio2017TRCにGO!

中川 真一

北海道大学 薬学研究院 教授
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