2015年09月12日(土)

ハレーすい星と赤道儀

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みなさん、ハレー彗星って知ってますか?
 
明るくて長い尾があって肉眼でも見える立派なほうき星です。76年周期でやってくるので一生に一度見えるかどうかですね。前回やってきたのは1986年3月、私は高校二年生でした。

 もともと私は顕微鏡でミクロの世界を観察することが好きでしたが、顕微鏡観察のスケッチコンテストでもらった双眼鏡(私の最初の研究テーマ参照:https://ncrna.jp/blog/item/37-2014-10-11-02-58-10)で星を見たりしていたので、天体現象というものにも興味がありました。私のおさななみじのT君(今や立派な内科医)が天文少年でして、よく二人で陣馬山に登って徹夜で星を見たりしてました。
 高校生の私は、ハレー彗星がやってくるということで、その姿を写真に残すことを計画しました。彗星の尾は暗いので写真に取る時はシャッターを開けた状態で、15-30分ぐらい露光しないと移りません。もちろん、その間地球は自転してますから、その間、星の動きにあわせてカメラを回していかねばなりません。その動きに必要なのが赤道儀です。市販のものは高いので、ボールベアリングとウォームギアなどの部品を買い揃えて、適当な木材を組み合わせて作りました。カメラの三脚に載せれば立派な赤道儀です。赤道儀に一眼レフのカメラと小型の望遠鏡を乗せ、回転軸を北極星にあわせて、小型望遠鏡で適当な星を追尾すればいいわけですが、これが結構大変です。なんせ、自作ですから、ギアを回すたびに振動がすごくてブレブレの写真がたくさん取れました。また軸を北極星に合わせるのも難しくて、星が次第にスコープから外れてしまったり。。とくかく本番に備えて、何度か近くの空き地で練習しました。
 ハレー彗星が地球に接近して立派な尾を出している時期は短いので、タイミングがとても重要です。また、町の明かりがなく暗くて空気のきれいなところで観測する必要があります。父が車を出してくれて、T君と三人で富士山の二合目まで行きました。夜になると、あいにく雲が出てきて、さらに雨まで降ってきて、「今日は駄目だ」と、車内でふてくされて寝てたのですが、ラッキーなことに明け方の4時ぐらいから急に晴れて、夜明けまでの短い時間でしたが、とびっきりきれいなハレー彗星を見ることができました。赤道儀を使って何枚か写真を撮りました。この写真はその時のベストショットです。長らく忘れていたのですが、数年前に実家の物置から発掘しました。すでにネガはなく、この写真だけ見つかりました。写真の表面が少し痛んでいるのがとても残念ですが、彗星の核から、白い塵の尾と、青いイオンの尾が二本出ているのがお分かりになるでしょうか?
 次は2061年に来るそうです。私は93才です。もし生きてたら、もう一度赤道儀を自作してその姿を写真に収めたいと思います。

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広報担当追記

写真の美しさがモニター上ではイマイチなのが残念、、、ということでコントラストをちょっと強調した写真を下に貼っておきます。

 
鈴木 勉

東京大学 工学系研究科 教授
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