研究を始めた修士・博士課程のころ、マイクロアレイや分子生物学的な手法を用いて転写制御やエピゲノム解析を行っていました。博士取得当時、先輩も卒業されて網羅的解析をしていたのが自分だけだったせいか、ボスの秋山先生のご指名を受けてセルイノベーションプロジェクトの担当になり、そこで次世代シークエンサーというテクノロジーに出会いました。これが最初の運命の出会いでした。最初は何をすれば良く分からなかったので、大腸癌細胞をただただ単純にRNA-seqをしたところ、タグの1/4くらいがノンコード領域に張り付いていることを見つけました。あら?なんじゃこれ?ここに宝があるんじゃね?誰もこんなわけわかんないとこやってないでしょ~!ワンピース見つけたよ~!、という軽いノリでlncRNAの研究を始めました。余談ですが、『NGS現場の会』という若手主導の分野・組織横断的な研究会の運営に携わることになり、そのおかげで生命情報の方々と共同で研究や勉強会などをすることも出来るようにもなりました。
僕の所属ラボは、純粋なwntのシグナル伝達のラボでしたので、長鎖ノンコーディングRNAについてはどころか、RNA研究自体あまり情報がありませんでした。開始当初は研究も手探りで、とりあえず重要そうなlncRNAに対するsiRNAを片っ端から購入して、つぶしたりしていました。すると、ノックダウンしたら細胞死やCell cycle arrestを誘導するlncRNAがあることに気づき、何だかこれはイケるんじゃないかしら?という感じになってきました。しかし、ここからの研究をどう進めるべきか分からず、むむむ困ったぞ!と思っていました。
が、ひょんなことから産総研に秋山研の先輩がいることに気づき、あれよあれよという間に、産総研時代の廣瀬先生の勉強会に潜り込ませて頂くことになりました。これが二番目の出会いです。隔週の勉強会で、そこで様々なことを学びました。RNA業界はこうなってるのか、RNAには結合タンパク質が必要なんだな、要チェックや!などと少しずつ情報を吸収しました。毎回、帰りのゆりかもめの中で、google先生やpubmed先生に聞きながら復習する、というのが恒例になっていました。現在は、大学院時代の同期が助教をしていた縁もあり、同じ分生研の泊先生のところに毎週せっせと勉強会へ参加しています。泊研も非常にレベルの高い勉強会で、いつも知恵熱で頭が痛くなってラボに戻っています。
そんなこんなワイワイしている間に少しずつデータが溜まり始め、2013年に小さいですが、ASBELというlncRNAが卵巣癌の腫瘍形成能に重要である、という論文を出すことが出来ました。その成果が買われたのか良く分かりませんが、2015年からネオタクソノミに採用させて頂き、今まで様々な面でサポートを頂きました。2年間で3度も海外学会を経験させて頂き、様々な情報と経験を得ることが出来ました。その際、北大事務の高橋さまには、手続き等で大変お世話になりました。また、中川研でin situのプロトコルを伺ったり、 超解像顕微鏡を触ってみたり、なこともありました。
公募班に入ったときは、秋山先生のご支援や廣瀬研や泊研での勉強会のおかげで、いくつかのlncRNA研究に関してデータをまとめていくフェーズに入っていました。結果、2016年に2本の論文をまとめることが出来、本領域に少し貢献出来たかな?と感じています。まだ、論文に出来ていない面白lncRNAもありますので、そちらを何とか論文にしたいと思っています。2017年7月に東大との契約が切れるので次のポストを探索中ですが、どこかでシークエンステクノロジーを使ったRNA研究と核酸医薬への応用研究が出来ればいいなぁと思っています。
なんだか長くなってしまいましたが何が言いたいかというと、とりあえず自分で面白そうだなと思う所に行って真面目にやってれば、なんだかんだ色んな人と出会えて、なんだかんだうまく回るんじゃないかなーということです。というふわっとした感じで、エッセーを終わらせていただきます。
2年間、本当にお世話になりました。ありがとうございました。