2016年06月20日(月)

研究室をHackする

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長尾さんの自己紹介の中に「生命科学のバックグラウンドは染色体なのですが、本当のバックグラウンドは、パソコン少年です。」とありましたが、私も長尾さんと同じ様に、小学校2年生の時にMSXという8ビットパソコンを買ってもらって以来、かれこれ30年以上パソコンをいじり続けているオタクの一人です。大学に入って真っ先にやったことは、あこがれの秋葉原に行ってパーツを買って自作PC (DOS/V互換機)を組み上げることでした。研究室に配属されてからも、当時助手でいらっしゃった鈴木さんのMSの解析用のパソコンを、秋葉原と研究室を自転車で往復しながらセットアップしたり、研究室のメールサーバー等を運用管理したりしていました。そんな私ですが、今のところ、なぜか(?)研究そのものにはあまりコンピュータを活用できていません。専らやっていることと言えば、研究室のコンピュータまわりの環境を整えて、研究室のメンバーに便利に使ってもらうことです。特に最近はまっているのが、Google Apps Script (GAS)Slackという無料のネットワークサービスです。

GoogleスプレッドシートとGASを用いた注文ノートの電子化

私たちの研究室では、もともと手書きの注文ノートを使って、出入りの複数の業者さんへの消耗品や試薬などの発注を行っていました。これはお手軽な反面、誰が何をいつ注文したのかという履歴をたどるのが大変なのと、色々な業者さんが目を通す注文ノートに納入価格や割引率などの情報を書くわけにも行かず、何をどの業者さんから買うべきなのかが分かりにくいという問題がありました。そこで、昨年思い切って注文ノートを電子化することにしました。

当初は、アメリカの大学で活用されているというQUARTZYも試してみたのですが、検索はできるものの一覧性が悪く、またラボマネージャーが一括して発注するというアメリカ式のやり方が私達の研究室の現状となじまない点があり、結局落ち着いたのがGoogleスプレッドシートでした。

Googleスプレッドシートは無料で使えるだけではなく、複数の人で編集するのに適しており、業者さん用のコンピュータを一台用意しておけば、研究室のメンバーは自分の席に座ったまま(というかコンピュータがあればどこからでも)発注が可能です。試行錯誤の結果、自動的に業者ごとにセルを色分けし、納品されたらその色が消えるように「条件付き書式」を設定することで、一覧性が格段に良くなりました。また、納品価格や割引率などの情報まで記載した研究室メンバー用のスプレッドシートと、それらを除いた業者さん用のスプレッドシートの2つを用意し、それらをIMPORTRANGEという(Excelには無い)関数を用いて相互に同期させることで、研究室内部で必要な記録はすべて残しつつ、外部には見せないということが可能となりました。さらに、JavaScriptをベースとしたGASで簡単なコードを書いて、自動的にバックアップをとったり、メニューから一発で再注文(過去の注文をコピー)できるようにしたり、毎月の注文一覧をPDF化して研究室メンバーにSlack(後述)で通知したりと、色々と便利に使っています。
 

研究室内のメールをSlackでチャット化

私たちはこれまでも研究室用のメーリングリストを作って、ラボ全体へのアナウンスに使ってきたのですが、最近、研究室内のコミュニケーションツールとしてSlackを導入しました。

Slackはもともとエンジニア用に開発され、IT系の企業を中心に爆発的な人気を得ているチャットサービス(要は業務用のLINEやiMessageのようなもの)です。一般的に、メールに比べてチャットは気軽でリアルタイムに使えるという利点がありますが、Slackはデザインが洗練されており使っていて心地よいこと、GoogleやDropboxなどの外部サービスとの連携が非常に便利にできていること、小規模なグループであれば無料のプランで十分実用的に使えること、などの点で頭一つ抜きん出ている様です。

私たちの研究室では、ラボ全体への重要なアナウンスを行うメインのチャンネルの他に、RI(放射性同位体)の使用記録用、面白い論文の紹介用、雑談用など、用途に合わせて7つほどチャンネルを設定し、外部サービスとも色々と連携させています。例えば、RIの使用記録用のチャンネルでは、RIを発注した際にその記録を残すとともに、自動的に研究室のGoogleカレンダーに納品予定日のイベントが作られ、納品当日の朝に発注した本人にリマインダーが送られるしくみになっています。また、今あるRIがいつ納品されたものでどれぐらい残っているのかということを、いちいちRI室まで確認に行かなくても済むように、これまでは研究室内に設置したホワイトボード(+マグネット)に記録して確認できるようにしていたのですが、これもGASを介してGoogleスプレッドシートと連携させることで、Slack内で減衰率も含めて確認できるようになっています(本当はRI室内にある管理システムそのものと連携できれば一番良いのですが・・・)。

雑談用のチャンネルは基本的に何を書いても良いことにして、ゆるいコミュニケーションの場になっています。また、私たちの大好きなアルゴノートタンパク質にあやかって「あるご」という名前のボットを住まわせていて、適当な雑談に応じてくれたり、コーヒーが入ったことを知らせてくれたりしています(自腹で買ったMESHというIoTデバイスでコーヒーメーカーと連携させています)。このあたりの連携(のための橋渡し)がサクッと出来てしまうのがGASの素晴らしいところです。

 

・・・なんだか、私自身の自己満足という側面がかなり強いような気もしてきましたし、本当に研究室のメンバーは便利だと思ってくれているのかとか、もっと本来の研究に生かした方が良いのではないかとか、そんなことに時間を使う暇があったら早く(以下略)とか、色々とお叱りもあろうかと思いますが、こういうことが息抜きとなってリフレッシュできるところがパソコン少年(というか中年)の悲しさ(というか喜び)であり、そのおかげで日々の研究や事務仕事にも打ち込めているということで、どうかご容赦いただければ幸いです。

泊 幸秀

東京大学 分子細胞生物学研究所 教授
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