私は昔、separaseという染色体分配に必要なプロテアーゼと、それに結合し阻害因子かつシャペロンとして機能するsecurinタンパク質を分裂酵母を使って研究していました。securinの配列の特徴が、種間で非常に保存性が低い(ほとんどない)ことです。実験的に同定されている分裂酵母、出芽酵母、ハエ、ヒト、線虫のsecurinは、アミノ酸配列レベルで並べることはできません。そんなsecurinにある変異を入れるとseparaseの基質になるということを示し、securinの中に7アミノ酸のエレメントが偽基質となってseparaseのプロテアーゼ活性を阻害するということをいいました (Nagao and Yanagida, 2006) 。その後はこの分野からは離れましたが、先日出た出芽酵母securin-separaseの複合体の構造の論文 (Luo and Tong, 2017)で、そのエレメントがseparaseの活性部位にはまっているのを見て、想像していた通りだったのに驚きました。さらに分裂酵母securinやseparaseの欠失・点変異の意味が位置関係からなんとなくわかり、なんだそういうことだったのかと感動し、近年いろいろな種のゲノムが読まれたためできるようになった近い種の間でのsecurinの配列アライメントが、これまでとまったく違って見えるようになりました。構造決定が大きいですが、いろいろな人たちの解析があってここまできたんだと思います。
ncRNAでも後に振り返ることのできる仕事をしていきたいと思います。2年間ありがとうございました。