2017年01月20日(金)

超解像あれこれ

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#3_CL_MENring_MENb5_(1)_SIM #3_CL_MENring_MENb5_(1)_SIM

「中川さんSIMって知ってる?やばいらしいよやばい。ミトコンドリアの内膜が見えるらしいんだよね。やばい。」と、
本領域の計画班員の鈴木勉さんから超解像顕微鏡のことを初めて聞いたのは2010年のこと。ちょうど、GérardさんとArchaさんたちが電子顕微鏡観察でパラスペックル内部でNeat1が規則正しく折りたたまれていることを報告した直後で、それだけやばい顕微鏡であればミトコンドリアの直径とさして変わらないパラスペックルの内部構造も綺麗に分かるに違いない!と、意気込んで大船のニコンの開発部にあるデモ機に早速サンプルを持ち込んで撮影してもらったのですが、ただの点にしか見えず。なんだこれ、大したことないやん。とか思っていたのですが、当時はカバーガラス厚が重要、マウント剤の屈折率が重要、カバーガラスをサンプルに乗せるのではダメ(カバーガラスにサンプルを貼り付ける・細胞を培養する)ということ正しく理解しておらず、点にしか見えなかったのは後から考えてみれば単にサンプルの調整の問題でした。ニコンさん、ごめんなさい。無知とは怖いものです。

それから3年。ネオタクソノミ領域で何か新しい事が出来ないかと、あれやこれやミクリさんのように妄想を膨らませながら日々brain stormingしていた頃、構内の食堂ですうどんをすすりながらふと机の上の三角チラシに目をやると「ライカのSTED顕微鏡絶賛デモ中!」という文字が。あれから3年も経ったし超解像顕微鏡も進化したかなあと早速見に行ってみると、これまで目にしたこともない、くっきりとしたそれはキレイなH3K4me3の画像が!しかもその時は湿気ダラダラの時期で、デモ機は温度湿度が想定外の空調があまりよろしくない部屋に置かれていたらしく、ライカのお姉さんが目をキラキラさせながら「これでも綺麗ですか?でも、本来ならばもっとくっきり見えるんですよ!!もっとすごいんですよ!!」と、もうこれで十分キレイなのに(お姉さんの方ではないです、いや、あ、お姉さんの方もです)、STEDの魅力を語ってくれます。ここまでこのお姉さんを夢中にさせたSTED、実際のところはどうなんだろうとその手のイメージングにかけてはプロ中のプロの和光理研の中野さんや佐甲さんに聞いてみたところ、同じ理研の大阪キャンパスの岡田さんが詳しいよ、とのこと。早速、岡田さんにコンタクトをとって色々教えてもらっている過程で、以前ニコンのショールームで見てもらった時の僕のサンプルの調整が全く見当はずれであったことが判明したわけです。FISHに限らず染め物一般に関してはそれなりにというかかなり自信があったのですが、いかに自分が浅い理解であったか。独特の仙人のような風貌の岡田さんが、仙人らしからぬコテコテの関西弁でニコニコ説明されるポイントはとてもわかりやすく、餅は餅屋、やはり専門家は違うなあと、自らの不明を反省、反省、反省。この辺りの超解像観察のポイントに関しては、実験医学別冊の「初めてでもできる!超解像イメージング」の岡田さんの章に詳しいです。ともあれ、サンプルを色々作り直して妊娠黄体細胞のパラスペックルをSTEDでスキャンした時に画面上に現れた、岡田さんがおっしゃるところの「まんじゅうの餅とあんこ」を目にした時は、オーっ!!と、大感激。新学術ではこいつを一つの目玉として取り入れて何かやってやろうと強く思った瞬間でした。

ここで悩ましいのが超解像顕微鏡には複数の方式があることで、STEDはお姉さんの太鼓判どおり素晴らしいことはよくわかったけれども、SIMもPALM/STORMも試してみたい。ということで、SIMがある四谷のZEISSのショールームに通いいの、高速SIMってどんなんだろうと白金台のNIKONのショールームに足をはこびいの、もう一度STED見てみるかとLEICAのショールームに押しかけえの、3D-PALMのデモ機は国内にはないということで勢い余ってZeiss本社のショールームがあるドイツまで飛んでみいのしているうちに着々とデータが集まってきて、これ別に顕微鏡買わなくったて論文書けるかも?とかいうワルい考えが頭をよぎったことは以前こちらのブログでも書きましたが、3社の機器にはそれぞれ長所と短所があり、なかなか全て兼ね揃えたパーフェクトヒューマンならぬパーフェクト顕微鏡はないものだなあと、つくづく思いました。全然関係ありませんが、パーフェクトヒューマン中田とは、てっきり中田ヒデのことだと思っていたのは僕だけでしょうか。いや、本当に全然関係ないですね。すいません。いつもながらついつい話が。。。

ともあれ、いろいろ悩ましかったのですが、領域の共通機器として購入するのであればSTED一本よりもPALMとSIMの両方が使える顕微鏡の方がよりワイドな用途に使えるだろう、ライブイメージングよりも固定サンプルが中心になるだろう、ということで、ZeissのPS1が設置されました。その後、日本ーオーストラリアジョイントのRNA関連ミーティングでパラスペックル発見者Archa FoxさんもSIM観察を始めていることを知り、どうせやるなら一緒にやりましょうよということで、むちゃむちゃ綺麗にパラスペックルが染まるNonoのスーパー抗体を送ってもらい、あーでもない、こーでもないとCharie Bondさんや廣瀬さんとも情報をやり取りしながら、パラスペックルの餅とあんこモデルの論文 (West et al. 2016)をまとめることができました。以前紹介したパラスペックルのCHART-RNAseqの、あの論文です。

超解像顕微鏡がパラスペックルのようなRNAとタンパク質の巨大複合体の解析に有用であるということは示せたとはいえ、Zeiss PS1のその能力の全てを引き出した使い方をしているわけではありません。特に、PALM観察に関してはまだまだ経験が浅く、実のところ、比較的大きく明確な内部構造を持つパラスペックルですら、きちんとした像が得られていません。PALMでは蛍光色素のblinkingを起こさせるために水系のバッファーを使用する必要があるのですが、パラスペックルがある核がカバーガラス面から離れたところにあるため、油浸レンズを使用した際に球面収差が大きくなりすぎるのが原因のようです。その辺りもう少し試行錯誤して、100nm越えの世界を見てみたい、これが、今後の一つの大きな課題です。もう一つの課題は、共通機器の超解像顕微鏡の使用率をより一層上げること。現在も毎週予定は入っているものの、稼働率は当初の目標の50%には到底達していません。お手元に"co-localizeしているシグナル"がある二重染色のサンプルをお持ちの方は、是非、一度、SIMで覗いてみてください。以前は分生研までえっちらおっちら自転車をこいでいかなければいけませんでしたが、今は徒歩30秒の場所にありますので、サンプルを送っていただければ、いつでも画像データをお送りします。領域内外にはこだわっておりませんので、近隣の方にも是非お声がけを!

中川 真一

北海道大学 薬学研究院 教授
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