ちなみに、最近はネオがお流行りのようで、ネオタクソノミ領域が始まった時は、ちょっとやりすぎたかな、ジンクピリチオンかけすぎたかな感もありましたが、ネオウイルス、ユビキチンネオバイオロジー、ネオセルフ、と、これはもうエピとかオーム並のブームを迎えている感じですね。
くだらん話はともかく、杉浦さんと僕のシンポの目玉はPaul Andersonさんです。ストレス時にはmRNAがストレス顆粒を形成して翻訳を停止しますが、このストレス顆粒という研究分野を切り開いた人、と言っても過言ではないかと思います。
元々リウマチが専門のお医者さんだそうなのですが、NK細胞が持つ顆粒の構成因子として同定したTIA-1というRNA結合分子の局在を調べている時、たまたまインキュベーターでほったらかしにされていた細胞を見た時に細胞質でヘンテコな顆粒を作っているのを見つけたのがきっかけだったとか。
これぞセレンデピティー!しかも、TIA-1はストレス顆粒の骨格として働いていることも明らかとなります。今に至るストレス顆粒の嚆矢となったKedersha et al. 1999のお仕事ですね。当時はただのartifactだろと、なかなか認められず、論文ではえらく苦労したとか。まさに開拓者。分野が出来る時、というのはいつもそういうものなのかもしれません。
また、2009年には、血管増殖因子として同定されていたAngiogeninがtRNAを切断してtiRNAという小さなRNAを作り、ストレス顆粒形成を誘導するという驚きの発見をされます。日本人のSatoshi Yamasakiさんとされた美しいお仕事ですね。
これまた、ストレス誘導で出てくるmiRNAがあるのかな、というノリでゲルを流してたまたま出てくるRNAを見つけたというのがきっかけだったとか。それがなんとtRNA由来!しかもそれを作る酵素が血管増殖因子!という、驚きの連続。このセレンディピティーはもう神の領域です。
ストレス顆粒形成にはプリオン様ドメインを持つタンパク質が関わっていて、この辺りの分子メカニズムはパラスペックルなどの核内構造体形成と共通しているところがあります。リウマチの研究をしていたらストレス顆粒という研究分野を作ってしまったPaulさんの発表、とても楽しみです。