2016年09月14日(水)

UC Berkeley Ingolia Lab 滞在レポート

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東京大学分子細胞生物学研究所・泊研究室の小林と申します。つい最近まで学生だったはずなのですが、気がつけばポスドク3年生です。

この度は領域のご支援を受けて、8月1日~12日のおよそ二週間、University of California, Berkeley校のNicholas Ingolia博士の研究室に滞在させて頂きました。目的は、ribosome profilingという実験技術の習得です。技術習得のご支援まで下さるとは、流石はRNAタクソノミです。帰国後には「サポートを受けられました皆様には、本領域ブログにてミーティングレポートへのご寄稿をお願いしております」という温かいメッセージまで頂きました。流石はRNAタクソノミです。

さて、Ribosome profilingとは、細胞内のmRNAの翻訳レベルを網羅的に測定する手法です。大まかには、以下のような手順で行います。

  1. 細胞をcycloheximideで処理することで、翻訳中のribosomeをmRNA上に固定する。
  2. この状態でRNase処理を行うことで、ribosomeによって保護されたmRNA断片(ribosome protected fragment, RPF)を得る。
  3. RPFをもとに、リンカー付加・逆転写・PCR等を介してlibraryを作成し、Deep-seqをかける。
  4. 得られたreadをmRNA配列上にマッピングすることで、mRNAの「どの部分」が「どの程度の効率」で翻訳されていたのかを解析する。

この手法は、Nicholas Ingolia博士とJonathan Weissman博士(University of California, San Francisco)らのグループによって、2009年に開発されました。Ingolia Labには現在、泊さんの一番弟子である岩崎信太郎さんが留学されており、これをいいことに(?)、二週間面倒を見て頂いた次第です。滞在中つきっきりで指導して下さった(かつ、Facilityの案内や、他研究室の案内や、Berkeleyのレストランの案内や、etc.)岩崎お兄さんには、重ね重ね、感謝申し上げます。(岩崎さんは今年10月より、理研にて独立される予定です。滞在中1日1回は「マンパワーが足りない」と口にされ、岩崎研究室での人手不足を懸念されていました。←これは感謝の気持ちを込めた宣伝です。)

この二週間の一番の収穫は、もちろんribosome profilingを教えて頂いたことなのですが、予想外の収穫も多く得られました。特筆すべきは、日本とアメリカの研究室の違いを体感できたことです。もちろん、一つの大学・研究室を見ただけで、これが米国流と決めつけるのはいかにも安易ですが、そこは、どうか、まあ、ご容赦頂けましたら幸いです。Berkeleyにいて最も素晴らしいと思ったのは、研究棟の中にstore room(あるいはstock room)と呼ばれるチューブや試薬類がstockされている部屋があることです(↑の写真)。研究室でよく使用する消耗品のほとんどは、この部屋で手に入りました。「あ、試薬がない」という時に、業者さんからの納品を待つことなく、store roomに行けば良いというのは確かに便利です(なんと、平日深夜や、土日も利用可能とのこと!)。欲しいものを手に取り、受付で品番・所属・氏名等を記入すれば、後日研究室に請求が行くようなシステムでした。また、stockならstore roomにあるさという安心感からか、日本でよく見るラボの一区画が消耗品・試薬のストックで占拠される現象は、Berkeleyでは見られませんでした。その一方で、これまでは当然だと思っていましたが、夜遅くまで安心して実験できる治安の良さは、日本の長所なのだなと気がつきました。東大にいると「注意!最近キャンパス内のカラスが凶暴です!」「注意!研究棟の前にヘビが出ました!」という平和なメールが届くのですが、Berkeleyでは「昨夜、キャンパス周辺のこことそことあそこで、強盗被害がありました」という恐怖のメールが岩崎さんのPCに届いていました。いつも好きなだけ実験できるこの環境は恵まれているのだと実感する、良い機会になりました。

また、このレポート中には書けませんでしたが、BerkeleyやSan Franciscoの街並みも素晴らしいものでした。こういった生活面については、今滞在の同行者である泊研の木村くんがレポートしてくれると思いますので、そちらをご参照頂ければと思います。

最後に、この素晴らしい機会を与えて下さった廣瀬先生、泊さん、Nicholas Ingolia博士、岩崎さんに心より感謝申し上げます。また、この度の滞在に際して懇切丁寧にサポートして下さった廣瀬研の髙橋さん、本当にありがとうございました。

小林 穂高

東京大学 分子細胞生物学研究所 博士研究員(日本学術振興会特別研究員) 

東京大学分子細胞生物学研究所・泊研究室にてポスドク1年生をしております。昨年度まで東北大学生命科学研究科・福田研究室にて細胞内のオルガネラ(ER・ゴルジ体・ミトコンドリア・エンドソームなど)の研究を行っておりました。ncRNAの魅力に引き込まれて、今年度からsmall ncRNAとオルガネラの関係性に着目した研究を行っております。新参者ですが、みなさま宜しくお願い致します。

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