2015年06月15日(月)

in situ hybridizationのプローブの作り方

投稿者:

ミニプレップばりに基本中の基本で、経験ある人にとっては常識すぎて今更感漂う手順ですが、初めての人にはそれなりに緊張感漂うRNAプローブの作り方をまとめておきます。

0)プローブの選択

 長さは1-2 kbのものを使うことが多いです。あんまり長いと、PCRもかかりにくいですし、in vitro転写の効率も落ちてきます。発現量が多いものであれば100 bpぐらいでも検出できますが、500bpは確保したいところです。重要なのは絶対にリピート配列を含めないこと!!特にSINE B1などabundantなリピート配列の場合、例え50 bpでも強烈にクロスします。RepeatMaskerを使って事前にリピート配列がないことを確かめるのは必須。ノザンもしくはサザンでシングルバンドが出るものであれば完璧です。

1)テンプレートの準備

 かつてはセシウム回せセシウムで精製したプラスミドを制限酵素で切って直鎖化して使うラボが多かったかと思いますが、PCRで増やしてしまう方が、早い、綺麗、コストも安い、の3拍子揃って断然お得です。RNAプローブ合成にはT3、T7、SP6等のプロモーターを使いますが、多くのベクターにはこれらの配列の外側にM13FWとM13RVの配列が入っていますので、それらのプライマーで増やすのが簡便です。テンプレートのプラスミドはミニプレップグレードで十分です。

Template DNA: plasmid 10 ng
M13 FW & RV Primer 10 µM: 1 µl each
dNTP: final 200 µM
Taq polymerase: 0.5 µl
total: 50 µl

96ºC 30 sec
55ºC 30 sec
72ºC 1~2 min
25 cycles

PCRの酵素や条件はどんなものでも構いません。1 µl電気泳動してみて、シングルバンドでバキバキに光って見えていればオーケーです。確認が終わったら、Promega Wizard等のカラムで精製して、30 µlに溶出します。PCR反応がsaturationまでいっていれば、だいたいこれで0.1 µg/µlぐらいの濃度になっているはずです。薄くても、転写反応の時に多めに使えばオーケー。シングルバンドにならなかったり増幅効率が悪い時は、あらかじめtemplate plasmidを酵素で切って直鎖化しておくとか、GC-richシークエンスの時のようにアルカリ変性するとか、PCR増幅を助けるDMSOやらベタインやら各種おまじないをするとか、、、はまりまくる時は基本に戻って、midiprepで撮ったプラスミドを酵素で直鎖化したものを使っています。

 

2)転写反応

Rocheのキットを使うのが一番楽ですね。僕らはT7 (#10881767001)、SP6 (#10810274001)、T3 (#11031163001)等の酵素、labeling Mixをそれぞれ購入して使っています。ラベルにはDIG (#11277073910), FITC (#11685619910), biotin (#11685597910)の各種キットが販売されていて、それぞれメリットとデメリットがありますが、1st choiceはDIGだと思います。

template DNA: 0.1~0.2 ug(PCR産物)or 1 µg (直鎖化プラスミド)

10 X Buffer: 2 µl
10x labelling Mix: 2 µl
enzyme: 2 µl
RNaseIn: 0.5 µl
total: 20 µl

37ºC 2 hours

反応が終わったら、1 µlの0.5M EDTA (pH 8.0)を加え、65ºCで5 min処理します。これで、沈殿していたピロリン酸が溶けて、気持ちよく次のステップにいけます。一応、2 µlを電気泳動して出来具合を確認します。コントロールとして、templateに使ったのと同じ量のDNAを流しておくことをお勧めします。うまく行った時は、だいたいtemplateと同じ明るさ(すなわち、転写反応産物の1/10しか流していないわけだから、templateの10倍以上のRNAが転写されたことになる)のバンドが見えるはずです。ただ、RNAですので、二次構造を取ることが多く、必ずしも一本のバンドにならなかったり、上のほうにスメアしたりしますが、それはあまり気にしなくても大丈夫。20 µlの系で、だいたい20 µgのRNAが合成できます。その半分でも構いません。1/10以下だと、、、ちょっと気持ち悪いですね。読みにくいtemplateの時は仕方がないですが、そんなときはやり直してみるのが一番。

3)プローブの精製

かつてはclassicalなリチウム/EtOH沈殿していましたが、取り込まれなかったfreeのlabel-NTPはバックグラウンドの元になるので、ゲルろ過スピンカラムで取り除いてしまうのが最善です。僕らのところでは、かつてシークエンス反応のDye Terminaterを取り除くために使っていたPrinceton Centricepを使用していますが、NTPが除けるスピンカラムであれば、どんなものでも構いません。

スピンカラムで精製したプローブは、大体1 µg/µlの濃度になっているはずです。これに等量のホルムアミドを加えて-20ºCで保存します。ホルムアミドを入れておくと、-20ºCで凍らない、RNaseの心配をしなくて良い、蒸発しにくい、など、様々なメリットがあります。これで数年間は使用可能のはず。通常のin situでは500xか1000x(final 1 µg/ml)で使いますが、超解像観察の時は100xや200xで使用したほうが綺麗な像が取れます。

 

最終修正日 2015年06月17日(水)
中川 真一

北海道大学 薬学研究院 教授
▶ プロフィールはこちら

ブログアーカイブ

ログイン

サイト内検索