2015年10月13日(火)

粘菌slug cut

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まずは、先日のin situの講習会の開催に関して、中川さんをはじめ関係者の方々にはお礼申し上げます。貴重な経験を有難うございました。

「粘菌の生の切片を切ろう!」と言う中川さんの熱いご要望に応え、講習会前々日から丁度良い形態になるように粘菌の発生をはじめ、前日の13時30分に新木場駅で中川さんと待ち合わせと言う事にしました。結構苦労してほぼ予定時間の少し前に到着して改札を出ましたが、それらしき人がいない!待てども来ない。

時間間違ったかな?と思っていたら、近くのカレー屋さんから写真に載っていた人が。
「初めまして中川です。」
何とフリーダムな人だ。明日から楽しみだ。

早速、粘菌を見せて様子を説明したら、とても興味深そうにシャーレを眺めていろいろ聞いてくるので、こちらもついつい説明してしまう。気がつけばオッさん二人が地下鉄とJRの改札を出たコンコースに座り込んで粘菌のシャーレを眺めて何やらディスカッションしているという非常にシュールな光景。行き交う人々はどう思っていたのでしょうか?

そして、翌日からの講習会、豪雨に見舞われた記憶が強いですが、中川さんのラボはほぼ想像通りの光景。とても親近感が湧きました。お目当てのdutA RNAも期待以上に綺麗に観察できましたし。

そんな中川さんから「私のお気に入り」という内容のエッセーを書けと言うお達しが。困った。趣味が雑然と多すぎる。真面目に仕事の事でも?いや〜、そんなに真面目でない。

困っていたら、先日の講習会に沖縄から参加された小宮さんのブログ記事が載っていて、その中に粘菌のslug cutについて記したところがあったので、そうだこれを紹介しよう!と思いました。

粘菌の移動体は光に向かって進みます。全てが同じ方向に進むとcutしやすいので、そのためにちょっと工夫をします。元々はガラスのシャーレをいれて乾熱滅菌するための金属容器なのですが、縦方向に細く切れ込み(スリット)を入れます。缶の中は光が乱反射しないようにマット黒(模型用)を丁寧に塗って真っ黒にしてあります。この中に寒天プレートにまいた粘菌を入れてあげると、やがて移動体を作ってスリットの方向に移動します。

ここまでは普通。小宮さんは誰に聞いたか人毛でと書いてありますが、確かにそのような手法もあります。しかし、それは職人芸。とても私には無理。しかも、人毛は誰のでも良いと言うのではありません。白人の女性の髪の毛でないといけないのです。残念ながら、そんな人手近にはいません。

そこで、小さいナイフを自作します。鉄だと弱いので、タングステン製のピンを買ってきます(ハンズで)。これをダイヤモンドグラインダーかダイヤモンドのヤスリで大まかに削って形を出します。そのままだとザラザラすぎるので、砥石の登場です。この場に及んで、その昔包丁の研ぎ方を祖父に教わったのが役に立つなんて。その要領で滑らかにしつつ、先を鋭利にします。注意点としては、鋭利にしすぎるとslugが滑ってしまって拾えないので、ほんのわずかにザラザラが残っている方が良いです。

あとは、ひたすらcutします。もし、ウエスタンにでも使いたいくらいサンプルが必要ならば500個から1,000個のslugをcutします。全部cutし終わるのに、2〜3時間かかりますのでその間に発生が進んでしまいます。それを見越して時間差で発生させます。ここまでくるとそれこそお気に入りでないと出来ませんね。ただ、職人になるには(どこを目指している?)まだまだ未熟者なので、もっと鍛錬が必要だと思っています。

 

川田 健文

東邦大学 理学部生物学科 教授
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