2015年01月25日(日)

パラスペックルの生理機能〜Neat1 KOマウス表現型解析の顛末(1)

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昨年の話ではありますが、ようやく、パラスペックルの生理機能を報告したNeat1 KOマウスの論文が世に出ました。一応、核内構造体に蓄積する長鎖ノンコーディングRNAとしては、Xistを除いては始めての表現型報告になるのではないかと。かなり嬉しかったので、ちょっと派手めにバナー風でリンク貼っときます。

表現型が見当たらないという論文を3年前に出しておいて今度は見つかりましたってズッコイなあ、というツッコミが入りそうですが、すいません。当時は気づかなかったのです。。。といいますか、実はこれ、レフリーのコメントの賜物でもありました。

そもそもGomafuをやっていた僕がなぜ押掛け女房的にNeat1のノックアウトマウスの解析を廣瀬さんとやることになったのか、パラスペックルを見つけたFoxさんたちに背中を押してもらい、なぜ表現型がなくても第一報の論文を投稿することになったのか、という経緯は以前ncRNAblog+の方で紹介しましたが、その論文を投稿した時のレフリーコメント、これが素晴らしく建設的なものでした。レフリーといえば理不尽なコメント。真夜中に藁人形に釘を打ちたくなるようなコメントをするのがレフリー。レフリー=鬼。こういった固定観念に凝り固まっていた身からすると涙が出るぐらい、厳しいながらも前向きなコメントだったのです。要は、もうちっときちんと発現パターンを調べなさい!Oversimplificationでしょ!!ということだったのですが、実際、例数を増やしてゆくと、肝臓での発現が個体間でものすごく差が大きいことがわかったり、大脳皮質でも全く発現していないと思っていたのがパラスペックルを作らないshort formであるNeat2_1に関してはこれまた個体によっては発現が見られたり、と、リバイスのおかげで、お前らとんでもない勘違いしてるのではないかと後々後ろ指を指されかねない事態を避けることができました。で、これらの追加実験を行っている過程で、ん、そういえば♀、全然見ていなかったなあ、ということで、卵巣におけるNeat1の発現を見たところ、、、

 

なんじゃこりゃあ!!!


Neat1のlong formを強く発現している細胞は稀、あったとしても特定の組織のごく一部の細胞、というのがこの論文の主旨だったのですが、なんとなんと、卵巣の黄体細胞では揃いも揃ってありえないぐらい強い発現が見られるではありませんか!!これまた言い訳になりますが、行動解析の時など、♀個体は性周期の影響を受けるので、特段の理由がない限り♂しか解析の対象にしないことはそこそこ一般的です。というわけで、人類はともかくマウスに関しては♀には全く興味がなかったのですが、この発現パターンを見て奮い立たないわけはありません。なんといっても、表現系解析は最も強い発現が見られる組織、タイミングに注目して行うのが王道です。というわけで、それまで♂にしか注目していなかった表現型の解析を♀でもやらなければ、と、思ったのが、2011年の2月のことでした。
(続く)

中川 真一

北海道大学 薬学研究院 教授
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