Alpha GOの衝撃はいきなりの対戦でトッププロが全く歯が立たなかったという点で、将棋電王戦の衝撃をはるかに超えるものがありました。「変な手ですねえ」「これは一目人間が有利」という序盤から、あれっ、あれっ、おかしいですよ、となって、結果は惨敗というのはプロ棋士が初めてコンピュータに一発入れられたあの第2回電王戦で一度通った道。強烈な既視感がありましたが、なんといっても心穏やかならぬ気持ちにさせられるのは、コンピュータソフトの序盤の「変態」ぶりです。局面が計算可能な終盤はともかく、場合の数では天文学的な数字になる序盤でもこれまでの常識を打ち破る手を指し、しかもそれが強い。強烈に強い。そうしてみると、コンピュータがはじき出した「評価値」の方が理にかなっている気さえしてくる。構想だとか創造力とか大局観だとかがが問われる序盤の局面ですら人間が歯が立たないのであれば、もう人間がやることは無くなってしまうのではないかと、ムンクの叫び状態になってしまった人は研究者の中には少なからずいたのではないでしょうか。はい。私もそうです。
最近の学生は「キット」を使うから原理が解らなくてね。
私なんて昔じぶんの「キット」作ってたもんね。
「キット」なんてカネかかるばっかりで。
という愚痴をこぼされる年配、いや、妙齢、いやいや、働き盛りの先生方、よくおられるような気がします。実際、僕が留学中はコンピテントセルなどは下手をすると一本1000円ぐらいで売られていたりしましたから、気合を入れて自作のコンピを1000本分注して、100万円丸儲け!!!となんか意味もなく豊かな気分になって、ちょっと奮発してカレーとKing FisherでRegent streetのガンジーでひとり打ち上げしていたのは良い思い出です。