ショウジョウバエに特化した学会は、アメリカで開催されるAnnual Drosophila Research Conferenceが最も大きく、EDRCはそれに次ぐ規模(oral 120題、ポスター 300題)で2年に1度開催され、ヨーロッパ全土からハエ屋が集まります。私は初参加(&初ドイツ)ということで、事前準備をきっちりして臨むはずでしたが、諸々の事情により、大急ぎでポスターを準備し、荷物を適当に詰め込み、パスポートの有効期限を確認(残り半年だった)するのが精一杯で、現地に関する予備知識も無く、着の身着のまま参加することになりました。
着の身着のまま空港へ向かったものの、乗るはずだった飛行機がストライキによりキャンセル。早起きして行ったのに!(ルフトハンザ航空は、よくストライキするそうですよ。)振替便は夜10時発のイスタンブール行き。まさかの12時間待機となりました。その後、20+α時間をかけてようやくドイツ入り。ところが、今度はバスを間違えて全く違うところへ行ってしまい(到着してから気付くタイプ)、半泣きで再び空港に戻り、どうにかこうにか目的地にたどり着きました。思った以上に意思疎通が難しく、学会に参加する前にだいぶ心が折れました。
さて、学会ですが、朝9時からプレナリーレクチャーで始まり、ワークショップやポスター発表を含めて夜10時ごろまで続きました。学会全体で印象深かったのは、ヒトの疾患に関わる遺伝子の解析の演題が非常に多く、ショウジョウバエの利点を生かして、積極的にヒトに繋げていこうという、高い目的意識を感じました。また神経発生のワークショップでは、脳神経の網羅的な解析、転写&クロマチンのワークショップでも、発生段階におけるクロマチン構造の変化を(組織特異的に)網羅的に解析するなど、スケールが大きい研究が沢山あり、「あんな(金も人材も時間もかかった)研究をガツガツやっていたら、自分が研究することがなくなりそう...」などと思いながら発表を聞いていました。また、この学会はショウジョウバエを使ったあらゆる研究をカバーしていることもあり、RNAに関する話題はごく一部、さらに言えば、私の研究テーマであるnoncoding RNA関連は長短合わせても20題に満たず。果たして私の研究に興味を持っている人がいるのだろうか。と不安になりながらの参加でしたが、心配には及ばす。たまたま通りかかって...という人もいれば、「これ面白かったからお前も聞いてみろよ。」とわざわざ他の人を連れてきてくれたり。さらに、今回の学会に参加しない限り、(ほぼ間違いなく)話す機会がないような方に話を聞いていただいたりと、学会ならではの経験ができました。また、思った以上にlncRNAに非常に興味を持っている、「潜在的lncRNA研究者」が結構いるなという収穫もありました。
ということで、学会は非常に活発かつハイレベルでしたし、会場があるハイデルベルグも街全体が可愛らしく、どこを見ても絵になる素敵な場所でした。食事もこれまで参加した国際学会の中で1、2位を争うくらいに素晴らしく、地ビールやドイツワインのおかげで、ポスター発表もリラックスして望むことができました。いろいろトラブルがありましたが(帰りも色々...もう書かない。)今度ヨーロッパに行く時は、その国の言葉をきちんと予習してこうと心に誓いました。