2017年02月24日(金)

生殖phasiRNAの機能って?

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先日、所属するOISTで自身の研究を発表する機会をいただいた。発表を聞いてくださったTim Hunt氏に後ろから肩をポンとたたかれ“発表、良かったよ” と感想をいただいた。

イネの700種を超える生殖large intergenic non-coding RNAs (生殖lincRNAs) を介した21塩基長のphased small RNAs (phasiRNA) の話に、興味を持ってくださる方も多く、はじめて聞く方には受けは良いほうだと思う(自分でいうか)。しかし、しかし、、なのだ、、、

問題は生殖lincRNAs、及び、phasiRNAsの機能がわかっていないこと。

phasiRNAと結合する生殖Argonauteの多くは細胞質に局在するので、まずは、phasiRNAsのトランス制御と見込んで、phasiRNAの標的候補RNAsのデグラドーム解析を行ったが、候補RNAsは切断されず、韓国のグループも同様の結果を示した。減数分裂初期に、一部生殖Argonauteが核内に移行することが観察されたので、メチローム解析と生殖lincRNAsトランスクリプトームにより、phasiRNAsのシス制御説を検証したが、結果はふるわなかった。この2~3年、Supplemental Figuresばかり増える現実に愕然とする。前述のTim Hunt氏に“翻訳抑制かな。Ribosomo profileは?” とのアドバイスをいただいた。もちろん、phasiRNAs機能の一つの仮説に翻訳抑制も視野にあるが、また、翻訳抑制ではずしたら、、、と腰が引き気味の自分がいる。第三回領域班会議のときには、しっかり迷走ぶり見破られ、塩見美喜子先生に、ぐ〜の音もでない根本の重要なご指摘をいただいた。研究が低迷&自身が迷走しているとき、本領域の皆様はどうやって切り抜けてきたのか深くうかがってみたかった。

ここ数年の植物phasiRNAs研究の動きとしては、藻類から被子植物にわたる多くの植物種で、21塩基長のphasiRNAsが報告された。イネ科植物の生殖特異的なphasiRNAsにとどまらず、植物防御応答遺伝子に由来するマメ科植物のphasiRNAsなども同定され、各phasiRNA生合成経路やphasiRNA多様性についての研究が進んでいる。多種多様な植物phasiRNAsが同定され、にぎやかにはなってきているが、いまだphasiRNA機能の多くはベールに包まれている。phasiRNAの機能解明はブレークスルーなのだ。

公募研究で採択いただいた二年間、上述した解析では生殖lincRNAs/phasiRNAの機能解明に辿りつけず、生殖lincRNAs等の多系統変異イネによる材料作りがメインになった。本領域で作成した変異体+αで、phasiRNAsの機能解明し、数年後(遅いかな)領域貢献できるよう、ひと踏ん張りしようと思う。採択中、出産もあり、学会やRNA club等にあまり参加せず、もったいないことをしたと反省している。本土の情報が入りづらい沖縄、積極性もスランプを抜け出す一手としたい(個人的には、御墓参りもしてご先祖様頼みも必要か)。

本領域でお会いできた多くのRNA研究者の方々のご縁を大切に、今後も、お会いした際には、研究の話やアドバイスをいただけたら大変嬉しいです。また、本領域採択により、優秀なテクニシャンAさん(写真)に出会うこともできました。

本領域での貴重な経験、繋がり、刺激、そして、研究支援いただき、心より感謝申し上げます。

本領域のさらなるご発展をお祈り申し上げます。

小宮 怜奈

沖縄科学技術大学院大学 サイエンス アンド テクノロジー アソシエート
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