2017年01月25日(水)

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私はトランスポゾンを抑える働きをもつpiRNAという小分子非コードRNAについて、この領域で研究を進めてきました。なかでも、Piwiタンパク質とpiRNAの複合体は核内で転写レベルの発現制御を行うことが知られていますが、そのメカニズムを明らかにするべく、次世代シーケンサーを用いたエピジェネティクス解析をメインに進めてきました。その結果、Piwi-piRNA複合体が、ヒストンH1やHP1aなど複数のタンパク質を介してクロマチンの構造を制御することにより標的となるトランスポゾンを抑制する、というモデルを提唱することができました(詳細についてはこちらでまとめています)。

この研究を進める過程では、沢山の方々にサポート頂きました。上記のモデルを提唱するにはChIP-seq解析が不可欠でしたが、最初はChIP-seqの実験系を再現性高く行うことに苦労しました。そんななか、東京大学の白髭先生にChIP-seqライブラリ作成のポイントを教えて頂き、再現性の高い良質なライブラリを安定的に作成できるようになりました。また、アメリカのウィスコンシンで開催された国際RNA学会で研究発表する機会を得ることができ、そこでの発表を聞いて下さったスタンフォード大学のHoward Chang先生にATAC-seqを用いてクロマチン構造を解析してみてはどうかというアドバイスを頂き、これが重要なデータに繋がりました。さらに、本領域計画班の美喜子さんのラボで開発された、人工的に任意の遺伝子を標的とするpiRNAを産生できる実験系を用いることで、モデルを検証することができました。

ノンコーディングRNAネオタクソノミでは、領域会議でのディスカッションやアドバイスはもちろんのこと、領域主催の国際シンポジウムで発表の機会を頂くなど、沢山のサポートを得て本研究をすすめていくことができました。また、この領域で大活躍している超解像顕微鏡を用いた核内でのイベントの観察や、試験管内での再構成系を用いた解析など、領域の先生方に相談しながらこれからチャレンジしたいと思うアイディアも沢山あり、今後に生かしていきたいと思っています。計画班の先生方は研究・人柄共に魅力的な方ばかりで、同じ領域で研究できたことをとても光栄に思います。公募班の先生方は、若手も多く、同世代でありながら自身のチームを率いていたり、素晴らしい業績をあげられていたり、出産・育児と研究を両立されていたりと、領域で共に研究できることが大きな励みになっていました。

ここまでの文章を書いていたら、こんなやりとりをふと思い出しました。数年前、ちょうど公募班としてこの領域に参加させて頂けることになった頃でしょうか、なにかの飲み会で学生さんから「出来ないことや知らないことが多すぎて研究を進めることができなくて困る」というような相談を受けました。そのときには、「とりあえず出来るところから頑張って研究していれば、それを見て出来ない部分についても色々な人たちが助けてくれるよ」というようなことを答えたような気がします。とくに学生さんは、「勉強」が個人プレイな側面が強いだけに、その延長として「研究」を考えると、そういうふうに捉えがちになるのかなと思います。実際に私個人としても、(こう見えても)出来るだけ他人に面倒をかけたくないマジメ長女気質で、学生時代のレポートなども完成度の高いものが出来るまで誰かに見せるのは恥ずかしい、と苦しんでいたタイプなので、そういった悩みはとても良く分かります。確かに、素晴らしく能力が高く、なんでも一人で出来てしまうというのが最高にカッコイイと思いますが、ただ、現実的に、少なくとも私はそういうスーパーデキるタイプではないと納得?し、助けてもらいながらも出来ることを地道に増やし、今度は、どこかで他のがんばっている人をサポートできればいいのかなという気持ちで取り組むことにしました。その結果、すこし楽になり、それでありながらより良い研究ができるようになったような気がします。実際に、この領域で進めてきた研究に関しても、先に書いたように沢山の方々にサポートしていただいたり、色々なプロジェクトに関わらせていただいてきた経験が生きて、進めることが出来たと感じています。

上の話はメンタリティの部分が強いですが、中川さんが以前書いておられた、共同研究などをとおした「1足す1は2よりもっと」という考え方にもとても共感します。ノンコーディングRNAネオタクソノミは研究者間のディスカッションも活発で、共同研究や若手支援等のサポート体制も充実していて、「1足す1は2よりもっと」な素晴らしい領域だと感じながら二年間を過ごさせて頂きました。本当にありがとうございました!

岩崎 由香

慶應義塾大学 医学部分子生物学教室 専任講師
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