2018年04月12日(木)

EMBO meeting @ Weismann Institute (4)

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ncRNA研究者のコミケ、もとい、意見交換会(これも微妙か)もいよいよ最終日。昨日の晩御飯ではアルコールが出なかったこともあり、体調も万全。今日も面白い話が次々と。

一番印象的だったのはオーガナイザーの一人でもあるAlena Shkumatavaさんの話。AlenaさんといえばDavid BartelのところでIgorさんとともにゼブラフィッシュでCyranoを含めたlncRNA同定の論文を出したので有名ですが、本人を見るのは初めて。論文リストそのまま、非常に強烈なお姉さまでした。前半は最近論文になったLibra/Nrepのお話。Libraというのは先の論文で同定されていた時はlinc-epb4.1l4という味気ない名前だったのですが、変異体が行動異常を示すのでLibra(lncRNA involved in behavioral alterations)となったそうです。竹千代が家康になったようなものですね。通常ゼブラフィッシュは水槽の下の方を泳いでいるらしいのですが、Libraは表層と深層をウロウロ。よく言えば好奇心旺盛。悪く言えば落ち着きがない。これだけでも十分面白いのですが、分子機能がまたすごい。LibraにはmiR-29の標的配列があるのですが、両端がperfect matchで真ん中にgapがあるタイプ。こういう場合攻守逆転、標的RNAが逆にmiRNAを分解するTDMD(target RNA-directed miRNA degradation)というメカニズムがあるらしいですが、LibraがなくなるとmiR-29が異常に上昇し、行動異常を引き起こすらしいです。このLibraの機能、マウスでも保存されているのか、というところが当然気になるところなのですが、マウスにはのLibraがない。残念ですね、で終わらないところがAlenaさん。miR-29をTDMDで分解するような配列がないかと探していくと、、、なんと、Libraとは全く関係のないNrep (neural regeneration protein)というタンパク質遺伝子のUTRにその配列が!つまり、Libraの機能ドメインがマウスではタンパク質mRNAのUTRにくっついている、というわけなんですね。本当に進化の神様は気まぐれなことをするものです。マウスのNrepのKOではmiR-29がやはり上昇していて、行動異常を示す。ネオタクソノミ領域でこのような作動エレメントを見つけられなかったのがちと悔しいですが、mRNAのUTRとlncRNAが同じ機能を持っているというのは、非常に興味深いです。

これだけでもお腹いっぱい、という感じでしたが、Alenaさん、特定のRNAに結合するタンパク質を根こそぎ同定するincPRINTという技術も開発されていて、XistやFirreの既知結合タンパク質をきちんと同定した上に新しい因子まで見つけていて、大谷くんではないですがもうこの人は他の惑星からきたのかと。詳細は論文になっていないので省きますが、アイデアとしてはシンプル。RNA結合タンパク質は大体もう全てわかっているのだから、それがlncRNAに結合するかどうかを調べれば良いわけです。そのアッセイをいかにscalableにするか。そこでその人のセンスが出るものですね。

標的RNAがmiRNAを分解する攻守逆転の話は他にも幾つかありまして、TDMDはなかなかホットな話題みたいです。BartelさんのところからはそのうちCyranoがmiR-7を分解しているという論文が出てくるとか。lncRNA-miRNA-circRNAのクロストークといったトークもあり、個々のRNA研究が広がりを持って有機的につながってきている感じです。そのほかここでは言えない書けない書ききれない未発表の面白い話も盛りだくさん。ncRNA研究、まだまだわかってないことだらけであることを今さらながら強く印象付けられた4日間でありました。最後に、今回のミーティングをすんごく短く新幹線フラッシュ風にまとめてみます。

  • クロマチンループを変化させるlncRNAの変異マウスが次々と。
  • 翻訳促進lncRNA意外と多い?変異体解析から。
  • 標的RNAがmiRNAを分解するTDMDの生理機能が明らかに。
  • Agoが取り込むmiRNAの特異性の不思議。なんで私がWAGOに?
  • NGS関連新技術の開発、ますます加速。
  • ミサイル飛んでくる?トランプさんもういい加減にして。研究者困惑。
中川 真一

北海道大学 薬学研究院 教授
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