2017年07月22日(土)

あれから10年

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10年前(2007)の今頃といえば、当時、上野の不忍池の近くにあったJSTの借りうけていた事務所にて、さきがけの面接があった頃である。千代田線の湯島駅でおりて、面接会場に向かった。その日は、梅雨明け後の非常に暑い日であったことを覚えている。薄暗い階段を上がっていった、つきあたりの事務室が面接会場であった。

故野本明男先生が研究統括をつとめる「RNAと生体機能」のさきがけ研究領域が開始されたのは、その前年2006年であり、私にとっては2回目の申請であった。前年度には、本新学術領域の影山さん、泊さん、藤原さんらが採択されていた。当時、前所属機関の軒先をかりて、独立した立場で基礎研究を行い始めて3年目の私にとって、さきがけ研究費は基礎研究を堂々とできる非常に魅力的な研究費であった(現在は、状況がかわってきていているようであるが)。

野本先生をはじめ、この研究領域のアドバイザーの先生方が面接会場にいた。このアドバイザーには本新学術研究領域の大野さんや班友の塩見(春彦)さんがいらっしゃった。おそらく、私は、研究内容、計画をいつものように、つまらない様子ではなしたのであろう。私の申請書の担当であったらしい大野さんから、「何がおもしろいのか、よくわからないけれども、説明してくれますか?」(といった内容の質問)。

面接も最後のほうになって、つくばで1度だけお会いしたことがあったX先生が、意を決したように、

X先生:「あなた、これ、本当にやりたいの? ちがうでしょう。」
私 (え!?ドキッ):「この研究をやります。」
X先生 :「本当?でもちがうでしょう? あなたがやりたいのは、○○〇な研究でしょう?例えば、□□□、▽▽▽のような。 そうでしょう?」
私(なんか、変だな、読まれているな、、): 「申請書に記載した研究を行います。。。。」

(一部、記憶がおぼろげで正確でない可能性もありますが、このような内容でした)

わきから、変な汗がどっとふき出てきた。その後、春彦さんからは、「細胞質の酵素はやらないのか?」といった、フォロー気味のコメントをいただいた。野本先生は、黙って質疑応答を聞いていらっしゃった。

そうして、短い、面接はあっという間に終了した。

幸運にも採択していただいた。しかし、最初の研究報告会議での発表後の質疑応答で

X先生: 「ん~、がまんしているとよくないので、いっちゃいます。他の先生方がいわないので、私がいいます。この研究でいいの?さきがけ研究だよ? あなたのはそれさきがけ研究じゃないよ。」(というような、ご意見をいただいた)。

不思議なことに、最初の頃は、研究報告会のたびに「何をいわれるのか?」とオドオドしていたが、次第に、「何かいってください!」といった感覚になっていった。毎回、報告会が終わると、宿題を研究室に持ち帰り、研究の方向、進め方を修正するようになっていった。正しい研究を正しい方法でおこなっているのか?? そのうち私はX先生のファンになってしまったようだ。(後日、X先生は高校の先輩であることが判明)。

さきがけ領域会議は、私にとって楽しいサイエンティフィックな会議になっていった。その後、やはり本新学術領域の中川さんや黒柳さん、班友の佐藤さんもさきがけに加わり、RNA研究を行う研究者同士のつながりができていった。また、切磋琢磨して、いい研究をしようという雰囲気で満たされていた。

野本先生がさきがけのメンバーに「応用研究などに縛られることはなく、好きなこと、面白い研究をしてください」と領域会議でおっしゃった。

間もなく、X先生が面接のときにいっていた、長年やりたく思っていた「□□□、▽▽▽」な研究を本腰をいれて開始した。成果はさきがけ研究中に発表することができたが、自分でも満足できる研究成果であったと思っている。

昨年の4月に12年間つとめた前所属機関を辞して、現所属へ異動し、あらたに研究室をセットアップした。研究内容は、さきがけ研究終了のころからやりたいと思っており、実際に少しずつ始めたものを継続して行っている。なかなか成果らしい成果がでず、苦戦を強いられている (と思う)。

最近、うれしいことがあった。さきがけ研究の終わりごろにはじめた、研究の一部を論文として発表することができた。今後、さらに継続して、研究を進めていきたいと思う。

最後に、10年前だと、いろいろな先生方にざっくばらんな、正直な意見をいただけたが、今は、あまりいただけない齢になってしまったようだ。ただ、現在、お世話になっている、新学術領域の会議などでは、新学術の先生方、若手の方には、10年前のさきがけ研究会議のように、自分の研究等の方向性、方法などの修正するために大いに批判的なご意見をいただきたいと期待している。

富田 耕造

東京大学 新領域創成科学研究科 教授
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