2019年03月20日(水)

5年前と変わったこと、変わらないこと

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5年前と言えば,僕が近畿大学に異動してきた年である.九州大学から一緒ついてきてくれた3人の学生とともに私大という未知の環境でラボを一から立ち上げるため,四苦八苦していた.この3人がいたおかげで,どれほど救われたことか.今はみなラボを去り,研究者や会社員としてそれぞれサイエンスに携わりつつ,自身の道を進んでくれている.そして,僕は相変わらず悪戦苦闘しながらも,5年前にはまだ高校生だった学生に囲まれて,何とか研究を続けられている.毎年卒業研究のために10人前後学生を一人で面倒見る.学生の数だけ,毎年卒研テーマを考えなければならない.当初はそんなの無理!と思っていたが,5年たって振り替えると,結局毎年新しいテーマを考えているわけではないことに気づく.

自分が興味を持ち,知りたいと思うことがいくつかあれば,それにアドレスするため日常的にあれこれいろいろ考える.そうやって思いついたことを,いろいろ試すのが実験であり,研究なのだと思うが,結局のところ僕が毎年に学生に与えるのは,卒業研究テーマという大そうなものではなく,そういう小さな思い付きや試し実験的なものが多かったように思う.実験に習熟した大学院生がやれば数週間で結果がでることかもしれないが,そこは卒研生,いろいろ思うようにはいかない.正直イライラすることもあるが,こちらが与えたのも思い付き的な,的を射たものかもわからない実験であったりもするので,結果が出れば儲けもん的なところもある.それを大した文句も言わずに,進めてくれる卒研生はありがたい存在である.実際,そうやって卒研生が頑張ってくれた実験の中から,もっと本腰を入れてやってみようか思うような知見も少しずつではあるが,出てきた.5年たった今は,そういう小さな成果を少しでもたくさん出すことが,今の環境で研究を発展させるカギになると考えるようになった.染色体やクロマチンといった,何の役に立つかよくわからない地味な研究をしていると,大学院まで進学してくれる卒研生はあまりいない.しかし,それでも中にはそんな研究に興味をもって進学してくれる有難い学生がいて,そういう小さな成果をより大きな成果へ結びつけようと今も頑張ってくれている.5年たって,近大での形はできた.これからどれだけのことができるか,まだまだ正念場は続く.

佐渡 敬

近畿大学 農学部 教授
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