2015年02月24日(火)

マテメソ

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マテリアルアンドメソッド、通称マテメソがごっそりsupplemental materialsになっている論文をここ数年良く眼にするようになってきました。そもそも、この、supplemental materials。僕が大学院にいた頃は存在すらなかったわけですが、最近ではクソ思慮深いレフリーの要求に丁寧に答えていると論文の容量がどんどん膨れ上がり、本体の図の数よりsupplemental figureの図の数が多い、なんていう冗談みたいな状況にもなりがちです。このあたり、研究者が研究者の首を締めているのだからざまあない、わけですが、本体の字数制限の犠牲に真っ先になるのが、マテメソの様な気がします。たしかに、論文を「物語」として読む場合にはマテメソはそれほど重要な要素ではありませんし、「物語」の面白さがクソ思慮深いエディターに最重要視される昨今では、どんどん扱いが小さくなってしまうのも仕方のないことかもしれません。しかし、しかしです。実験の再現性、ということを考えると、やはり、マテメソ、軽んじるべからず。です。まずはこちらをご覧ください。さて、A, B, Cでprobe A, Bの分布がえらく違うのはよくわかっていただけると思うのですが、これ、どのような実験条件の差かお分かりになりますでしょうか。
なんとこれ、全く同じプローブで、希釈しているバッファーが異なるだけです。
A: TBS + Triton X-100
B: TBS + Triton X-100 + Skim Milk
C: Can Get Signal
ええっっ!!全然違う!
ちなみに、ここでは固定でPFAを使っていますが、メタノール:アセトン固定を行うと、これまた全く異なったパターンで染まります。理由はさっぱりわかりませんが、たとえば抗体によってはブロッキング剤で結果が異なるものが良くあります(有名なpolII CTDリン酸化酵素H5や抗チロシンリン酸化抗体PY20はミルクをブロッキングに使うとハマるとか)。一体何なんでしょう。これ。君子危うきに近寄らずであまり深入りするのはやめておこうかなと思い始めていますが、、、
 
いずれにせよ、抗体染色やin situ hybridizationのように、ミニプレップばりに脊髄反射のみでできる実験の時など、細かい条件はマテメソでついつい省きがちです。マテメソに含めないことすらあります。しかし、やはり、細かい条件が揃わなければ同じ結果が出るとは限りません。ふっふっふ、実は秘伝の技があってそれは門外不出じゃあ、という技術はそれはそれであっても良いとは思いますが、マテメソを軽視していると、あんたの論文ウソでしょ?とかいう思いもかけない後ろ指をさされかねないなあ、と。実験というのはつくづく奥が深いです。
 
中川 真一

北海道大学 薬学研究院 教授
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