2018年07月18日(水)

IDPゴードン会議参加報告

投稿者: 坪山 幸太郎

東大定量研RNA機能分野(泊研)に所属しております博士課程3年の坪山幸太郎と申します。今回、領域のご支援を頂いて、Intrinsically Disordered Protein (天然変性タンパク質、以下IDP)のゴードン会議に参加させていただきましたのでご報告いたします。

今回の会議は、スイスのLes Diableretsというジュネーブから2時間ほどの山村で行われました。スイスへは今回が初めてでしたが、英語がどこでも通じ、清潔かつ安全(みなさん会場内に平気でノートパソコンやスマートフォンを置きっぱなしにするほど!)で、とても過ごしやすい環境でした。ただし、例えばスターバックスの普通のコーヒーが8スイスフラン(~900円)ととても物価(+税金)が高いのが唯一の難点でしょうか。

学会自体は、参加者が300人ほどでかつかなりキャンセル待ちの人もいたようで、このIDPという分野(もしくは相転移; Phase separation)が今ホットトピックであることを物語っています。内容としては、1分子解析やNMRから遺伝学に及ぶ幅広い範囲に渡っています。
私の個人的な印象に残っている発表としては、

などが印象に残っています。その他にも、Simon Albert教授のSup35(翻訳終結因子の一つのホモログ)の相転移の生理的な意義解析や、これに関連しとある翻訳開始因子の一つの相転移が翻訳状態に及ぼす影響とその生理的な意義、Jamie Greig博士のIDPが核内構造体のパラスペックルに行くのか、核小体に行くのかをアミノ酸配列の観点から体系的に解析した成果なども詳しく記載できませんが、とても興味深かったです。(ちなみにAlbert教授は、今年の年末の分生やTRCにいらっしゃる予定なので、この話の続きがきっと日本でも聞けるかと思うと今から楽しみです。)

一方で、大塚さんの記事に記載されているF教授のお言葉である「猫も杓子もリボソームプロファイリング」ではないですが、今回の学会では「猫も杓子もphase separation」という印象も受けました。タンパク質Xを低塩濃度にするとLiquid dropletを作り、そのタンパク質にある点変異を導入すると更にそのdropletを作る閾値が下がる、そしてそのDropletのFRAPというお決まりのデータを安易に並べた発表も散見されたのは残念でした。やはりホットな領域ですので仕方が無いのかもしれません。

私は、RNAサイレンシングで中心的な役割を果たすArgonauteタンパク質の、シャペロンや小分子RNAの積み込みによる構造変化を1分子FRETによって捉えたという成果を報告いたしました。Agoは複数のドメインからなるタンパク質でありその間はフレキシブルなリンカーで繋がれていて、実はIDPの一種であることが分かっています。上述したSchuler教授が私のポスターに来てくださり、100kDaを超えるタンパク質で1分子FRETを行ったことは「チャレンジング」であり、シャペロンの機能を具体的に示したことは「エクセレント」だとお褒めいただきました。このこともあり、幸運にも今回ポスター賞をいただくことができました。(日本のように副賞をその場で渡すのではなく、そのかわりにドル建てで振込ということらしいですが、このようにドライなところがいかにも海外らしいなと思いました。) 今まで、1分子の専門家からの評価をいただく機会があまりなかったので、今回の成果をRNA分野以外の視点で客観的に評価していただいたことを嬉しく思いました。また、今現在の泊研の1分子イメージングの研究環境についても客観的に見つめ直すことができました。具体的には、タンパク質精製やその機能評価、また今回の論文で使用した蛍光色素のアミノ酸残基特異的な導入などサンプル調製に関わる部分はSchuler教授の研究室を含む1分子の研究室を凌駕している一方で、顕微鏡装置やデータ解析技術などはやはり1分子のみを専門に行っている研究室にかなわない部分もあると感じました。必要に応じて、今回伺った内容をもとに今後に改良していければと思っています。

最後になりますが、ゴードン会議での参加・発表に際してRNAタクソノミからご支援いただけたことを感謝申し上げます。

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