2017年07月31日(月)

花が咲かないイネと、ともに10年

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10年前の2007年、NAISTの島本 功教授 (故人) の研究室で行われていた花成ホルモン,フロリゲンの研究がScience誌に掲載され、ネットニュースにも “花咲爺さんの灰を発見!!!”と話題となり、島本研は華いでいた。その中、私は、島本研でオーバードクターなりたてほやほや、、、いつ学位が取得できるのかと不安な気持ちとストレスに包まれていた。

 当時、NAISTでは、学術論文一報が学位取得の条件で(現在は、取得条件が変っていると聞いている)、投稿中の論文がアクセプトされると、年に4回(3月、6月、9月そして12月) ある学位審査の一番近い会に、審査を受けることができた。私の場合は2007年12月の論文審査に間に合うようにと、アクセプトの一報を今か今かと待っていたことを記憶している。

 私は、島本研の花成チームで、フロリゲン(Hd3a)と相同性のもっとも高いファミリー遺伝子,RFT1の研究を進めていた。当時はゲノム編集技術もなく、RNAiの技術を用いて、Hd3aRNAi イネ、RFT1 RNAi イネ、そして、同時にHd3a RFT1の発現抑制を試みたdouble Hd3a-RFT1 RNAiイネによる3種のRNAi イネを作成して、花成の制御機構を解析した。通常、水田の稲(栽培種)は1年性なので、播種してから2~4ヶ月で花が咲く。しかし、Hd3aRFT1の発現が同時に抑制されたdoubleHd3a-RFT1 RNAiイネは、300日経ても花が咲かないことから、イネにおいては、Hd3a(短日フロリゲン)とRFT1(後、長日フロリゲン)が重要な花成因子なのだということを明らかにした。2007年12月の学位審査直前にDevelopment誌から受託の通知があり、学位審査を終え、2007年12月に無事に博士(バイオサイエンス)を授与していただいた。12月ということもあり、私を含めたった三人だけの授与式だった。講堂ではなく、事務棟の小さな部屋だった。安田國雄学長(当時)が、一人一人の学位論文のタイトルを仰り、学位記を授与していただいたときは、目頭が熱くなった。10ヶ月オーバーしてしまったけれど、少人数の授与式もいいなあと思った。2007年は、フロリゲンで話題になった年でもあるが、個人としても、はじめて学術誌に研究報告し、学位をいただき、研究者の一歩を踏み出すことができた重要な年となっている。

 写真にのせているイネ(右)は、10年前に自身が作成したdouble Hd3a-RFT1 RNAiイネの“現在”。当時、花成チームでポスドクをされていた田岡健一郎氏(現木原生物学研究所) に、株分けしながら保存を続けているdouble Hd3a-RFT1 RNAiイネの写真を撮って送っていただいた。“ずっと育てていると、株によっては、散発的に出穂するものもまれにありましたが、基本、出穂はない(花が咲かない)といえると思います。”と説明もいただき、一応、double Hd3a-RFT1 RNAiイネは10年間花が咲いていない。ということになる。10年間、花を咲かせずに、栄養成長しつづけていたイネの写真をみて感慨深く、そして心熱くなった。

 2017年、本領域に、繰り上げで拾っていただいた。10年前の2007年も、そして、現在の2017年も、多くの人に支えていただいて研究を進めることができている。運も味方に、2017年は、生殖non-coding RNA群の機能の突破口を切り開いた年だったな〜と、10年後の2027年に振り返られるよう日々精進していきたい。

小宮 怜奈

沖縄科学技術大学院大学 サイエンス アンド テクノロジー アソシエート
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