2017年12月31日(日)

CSHL meeting 2017 ”Forty Years of mRNA Splicing: From Discovery to Therapeutics”

投稿者: 矢野 佳芳 (新潟大学、日本学術振興会特別研究員RPD)

毎年のように学会に参加/発表をすることは、以前の私にとっては当たり前でしたが、出産を機に子育てをしながら学会に参加、さらに発表することの困難さに直面しました。思い返せば、前回の学会参加は2011年ロックフェラー大学研究員時代のゴードンカンファレンスで、主人と交互に子供の面倒を見ながらセッションに参加するというものでした。しかしながら、このゴードンカンファレンスは比較的規模が小さくクローズドな会議だけに、著名な研究者の最先端のトークを効率良く聞くことができ、コミュニケーションが取りやすい距離感であることがとても魅力であり、印象に残るものでした。

 今回、Qki5の研究を、可能であれば同様の優れた国際会議で発表できたらとささやかながら希望を持っておりましたが、子供がいながらの出張となるとかなりの制約があり、ニの足を踏んでいました。しかし、今年は”Forty Years of mRNA Splicing: From Discovery to Therapeutics”という特別なCold Spring Harbor Laboratory (CSHL) meetingが開催予定であることを知りました。時を同じくして論文は投稿中、Cold Spring Harbor PressのGenes  Devに切り替えてrevision中となっていました。そこで、主人に「splicingの発見から40年の節目の年にCSHL meetingで発表できるのは千載一遇のチャンスじゃないか」と背中を押され、思い切って学会発表を決意するに至りました。論文は無事9月15日にAcceptとなり、少し落ち着いた心持ちでNY行きの飛行機に乗り込むことができました。

 いざmeetingに参加してみると、40年の歴史の重みと大御所研究者の同窓会のような雰囲気に包まれており、それぞれの研究者がどのような系譜の中でサイエンスの歴史が紡がれて来たのかを感じました。私はBob Darnell研の出身者の一人として、その場を共有することができただけで感慨深いものがありました。初日は、Bobの父親であるJim DarnellのOverviewから始まり、Phil Sharp、Joan Steitzと圧巻のsplicingヒストリーが続き、その偉大さを改めて認識しました。 歴史を紐解くとSociety for RNAの前身が、Cold Spring Harborで今も続くpre-mRNA processingに関するmeetingであったこと、つまり現在のRNA研究の発展の起点にはpre-mRNAの合成からプロセシングにあるといっても過言ではない、ということに気づきました。その中で、日本人研究者の貢献の大きさも垣間見ることができ、日本RNA学会の立ち上げも同様であっただろうことは想像に難くありません。このRNA研究の歴史の中で自分の研究がどういう位置づけになるのかを考える良い機会になりました。

 二日目、私のポスター発表には、U2 snRNPやU12 snRNPなどのsplicingメカニズムを明らかにした研究者や、神経系の解析をしている若手PIの方にも議論を頂き、とても有意義でした。meeting後半では、脊髄性筋萎縮症(SMA)の治療薬として、ちょうど1年前2016年12月23日に米国の食品医薬品局(FDA)により承認された核酸医薬スピンラザの成功についてのAdrian Kreiner博士の話には感動を覚えました。ベンチサイエンティストとしては、from bench to bedsideを実現した夢のような大発見であり、臨床でのSMA患者である子が三輪車に乗れるようになった姿のビデオを含めたトークの展開には、研究者の使命を感じました。続いて、恩師であるBob Darnell博士の登場、まさにNHKの番組ファミリーヒストリーを彷彿とさせる自身の子供時代の写真、家族写真を交えた和やかなトークから、後半は最新鋭の技術を使ったデータは圧巻で、常に進化をし続けるBobにまた改めて尊敬の念を抱きました(BobとJimは、2015年、2017年にm6A CLIPに関する論文を父子で共著者としてGenes Devに出しています)。その後、Bobにはin pressになった我々の論文を手渡すことができ、とても良い思い出になりました。最後にBen Blencoweの発表は、splicingマイクロアレイの開発、RNAseq、CRISPRと分けられた技術ヒストリーの変遷、既報の彼自身が注目するマイクロエクソンの制御メカニズムから、特に基本的翻訳因子が神経特異的に持つマイクロエクソンの機能意義までを追求した最新データは素晴らしく、meetingの最終演者に相応しく本領域の今後のさらなる展開を予期させるものでありました。これらの素晴らしい研究者の集いに参加し、大きなサイエンスの歴史の中の一部になるような研究を残りの研究者人生でしていきたいと身が引き締まる思いであり、同時に、何らかの形で病気の人を救うことに繋げられたらとの使命感を改めて感じました。

 最後に、CSHL meetingでの発表に際してRNAタクソノミから多大なるサポートを頂き、大変貴重な機会を得ることができましたことに感謝申し上げます。事務手続きでお世話になりました北海道大学の高橋さんには(メールからも明るく優しい人柄が伝わりました)、この場を借りてお礼申し上げます。また、私が研究をすることをサポートしてくれている主人と二人の子にも感謝の気持ちを伝えたいです。

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