主催者は前者がGene Yeo、Jernez Ule、Karla Neugebauer、Melissa Mooreで、後者はKevin Morris、Archa Fox、Paloma Giangrandeでした。会場はカナディアンロッキーの麓に位置するため、ひとたび外に出れば氷点下20度を切る冷気が魔物のような力で体を締めつけますが、会場では今年も熱い議論がなされました。
Keystoneではその年およびミーティングごとに、ホットトピックがかなり異なります。今回特に印象に残ったトピックは、溶液の中で特定のタンパク質とRNAが集まって局所的に分離し、液滴ないしはゼリー状の構造体が生じる現象であるLiquid-liquid phase separation (LLPS)でした。たとえばRoy Parkerはストレス顆粒を、Karla NeugebauerはCajal体とヒストンローカス体を、北大の廣瀬氏はパラスペックルを、MacRae研の方はAgo2/TNRC6複合体について、LLPSという観点から構造形成メカニズムを捉える研究を展開していました。
朝、昼、晩の食事は会場で取りましたが、その際に廣瀬氏が知り合いの研究者と旧交を温めるのみならず、人のつながりを生かして初対面の研究者と新しい共同研究に繋がる話をする姿を間近で見られたことは、得がたい経験となりました。私は今回、ショートトークとして、パラスペックルを構築するNEAT1長鎖ncRNAが細胞からTRIZOL抽出しにくく、ほとんどのNEAT1が実はタンパク層にトラップされていたこと、NEAT1のように抽出しにくいRNAを探索することで、核内ボディ様の局在を示す長鎖ncRNA群を見つけたことについて発表しました。この研究は、数年前に廣瀬研に移ってきた際にNEAT1を安定して抽出できなかったという苦い経験を原点としており、結果的に独自な切り口の研究に育てることができました。今回のキーストーンでは改めて、世界にはものすごく賢い研究者や、ブルドーザー的なオミクス研究を展開する研究者がたくさんいることを痛感しました。そのようなパワフルな多くの研究者がいる中で自分も良い研究をしたいと思うならば、人真似をせずに自らの価値観を持ち、一方で自分ではできない技術を持つ他の研究者の力も借りて、深く杭を打つことが重要である点を強く再認識しました。 私個人としては、核内RNA顆粒を構築するアーキテクチュラルRNAというncRNAのカテゴリーの確立に向けて、泥くさく頑張ろうという思いをいっそう強くしました。
今回、このような貴重な機会を与えてくださった本領域に、深く感謝申し上げます。