古典的な遺伝学では、突然変異を起こしたマウスを交配して、観察が中心となる研究スタイルである。時代が進みマウスやヒトの全遺伝子の情報がわかり、その情報を元に人為的に狙った遺伝子を欠損させたKOマウスを作るようになっても、研究の手法は基本的に同じである。どこに注目するかも、個人の特色が現れる点かもしれない。むやみに全体を見渡しても表現型がわからない場合もあるし、そもそも胎児期に死んでしまい生まれてこない場合もある。死んでしまう場合は、お手上げ状態になり、その後の解析がストップした研究も過去には多くあるであろう。また、なかなか異常が見つかりにくい場合はKOした遺伝子がいつどこで発現しているか?その情報が解析するのか手がかりになる場合もある。どこまでこだわるか、粘り強く解析を続けられるかも個性が現れる点である。
最近では研究手法の進歩もあり、単なる観察だけではなく、異常が見つかった場合その機構を明らかにすることが求められるようになってきた。個体レベルのみならず、細胞レベルの解析が必要になる場合も多い。遺伝子改変はもとより、網羅的に遺伝子の発現や、分子同士の結合を解析する方法、イメージングで解析する方法など、その技術は高度化、専門化しながらより広範囲に及ぶ。これらをうまく組み合わせて、全体の構成を練っていく。新学術前半を終えて、少しずつであるが前進したと感じている。今の基礎を土台して、次のステップでさらに研究を飛躍させたい。