2018年04月05日(木)

ゆく年度、くる年度

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大学の使命は研究と同時に、人材育成にある。18歳人口が減少するなか、大学ではいかに学生を勧誘するかに皆が注力している。定員割れが起きれば、大学経営にも影響があるので死活問題である。現在の基礎研究、特に生物学分野では、研究は一人ではできず、組織で行うことが多くなっている。そのため、研究を上手く進める上でも、貴重なマンパワーである優秀な学生を皆が求めるのは、至極もっともなことかもしれない。私はH29年度に東京医科歯科大学から産業技術研究所に異動したので、表面上は教育から一旦離れたように見えたかもしれない。だが実際は、指導している博士課程最終年度の学生を一人、大学に残して来た。昨年度、無事彼も卒業し「博士」の学位を取得することができた。めでたい!と同時にホッとした。

これまで自分が受けた教育を振り替えてみると、教育とはいかに時間を割いて、学生をよく観察することから始まる気がする。真偽のほどは定かではないが、恩師の一人は人間観察が趣味とおっしゃっていた。忙しい恩師の先生方は、私の言動を注意深く観察し、必要なタイミングで、必要な助言をしてくださった。何と絶妙なタイミング!そして私にもわかる具体的なアドバイス!叱咤激励!そのおかげで、私は何とか研究を続けることができている。また自分でも気がつかないうちに研究の進め方、考え方、遺伝子の名前の付け方(!)までも、恩師の先生方に強く影響を受けている(汗)。ありがたいことである。恩師の先生方には及ばないものの、自分も何とか次世代を育てたいと、悪戦苦闘している。学生はそれぞれの個性があるので、その一人一人対応は異なる。こちらも柔軟に対応しなければならない。これがなかなか難しい。ちょうど良い按配を見つけるのに時間がかかる。私の場合は、産総研に異動してからも、毎週医科歯科大学に行ってディスカッションをして、直接学生の様子を観察しながら、指導した。巷ではスカイプなどの便利なビデオ会議ができるシステムがあるが、これではこちらの意図を学生がどれだけ理解しているか、微妙なニュアンンスが伝わっているか判断するのが難しいからだ。微妙な顔の表情の変化など良く観察して、必要なタイミングで必要な助言、叱咤激励をすることはかくも難しいことなのである。このような指導が正解だったかわからないが、3年間で無事学位取得に至った。今年度から、入れ替わりに新しい学生が我々のグループに加わってくれた。研究所にも大学から学生を受け入れるシステムがあるのだ。それを利用させてもらった。また、私も悪戦苦闘する日々が始めるかもしれない。学生とともに、お互い良い刺激を受けて、共に成長できればと思う今日この頃である。

 

最後に、細井君卒業おめでとう!

卒業と順番は逆になったが論文アクセプトまで持って行こう!

社会に出てこれからが、本番だ。新しい環境、新しい人間関係で大きく飛躍してほしい。

小林 慎

産業技術総合研究所 研究員
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