中川 真一

中川 真一

北海道大学 薬学研究院 教授
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ピペットマンとピンセットばかり握っていたベンチ屋がMoistureを目指す時、越えなければいけない最初の壁がTerminalのコマンドライン、次の壁がRでしょうか。最近、海の向こうでは壁を作るのがはやってるみたいですが、壁はピンクフロイドだけにしておいて、目指せMoiture、サルでもできるRの続きです。

ここ数年で、コテコテのベンチ屋でもある程度の次世代シークエンサーのデータ解析ができる環境がどんどん整ってきました。なんのセットアップも必要なくNCBIのBLAST感覚で手軽に利用できるのがクラウドベースの解析環境で、老舗のGalaxyに加え、最近はセルイノベーションプログラムで整備された遺伝研のMaserなどがきめ細やかなサービスを提供してくれています。さすが遺伝研。また、とっても素人friendlyな「次世代シークエンサーDRY解析教本」などのスグレモノ書籍も出版され、my Macに各種ツールをインストールして自前でなんちゃってNGS解析しているwetな学生さん(性格がwetなわけではない)も数多くおられると思います。そう。もう、仕事をDryとWetなんて分ける時代ではない。今や時代は、理研CDBの工樂さんがおっしゃるところの、"Moisture"で行こう!です。(2/8追記:ったくこれだから素人は、、、というミスがありましたので訂正入れました

2017年01月20日(金)

超解像あれこれ

「中川さんSIMって知ってる?やばいらしいよやばい。ミトコンドリアの内膜が見えるらしいんだよね。やばい。」と、
本領域の計画班員の鈴木勉さんから超解像顕微鏡のことを初めて聞いたのは2010年のこと。ちょうど、GérardさんとArchaさんたちが電子顕微鏡観察でパラスペックル内部でNeat1が規則正しく折りたたまれていることを報告した直後で、それだけやばい顕微鏡であればミトコンドリアの直径とさして変わらないパラスペックルの内部構造も綺麗に分かるに違いない!と、意気込んで大船のニコンの開発部にあるデモ機に早速サンプルを持ち込んで撮影してもらったのですが、ただの点にしか見えず。なんだこれ、大したことないやん。とか思っていたのですが、当時はカバーガラス厚が重要、マウント剤の屈折率が重要、カバーガラスをサンプルに乗せるのではダメ(カバーガラスにサンプルを貼り付ける・細胞を培養する)ということ正しく理解しておらず、点にしか見えなかったのは後から考えてみれば単にサンプルの調整の問題でした。ニコンさん、ごめんなさい。無知とは怖いものです。

「ネット」=「妖しいもの」というのが一昔前は定番だったと思いますが、今ではすっかり市民権を得て、新聞やテレビよりも信頼できる、なんて言っている人もいるようです。その真偽はともかくとして、ネット上のSNSは情報収集という観点からはなかなかバカにならないものがありまして、先日の当ブログのエントリーにも、早速rnacintosh LC475さんからツッコミがありました。

ちょっと前に谷上さんも書いておられましたが、今の時代、ちょいと調べてみようか、と思った実験の結果が公共データーベースにのっているというのはよくある話で、自分の実験を組み立てる前にデーターベースを当たってみて情報収集をするというのは、ムダを省く上でも必須の作業になりつつあります。個人的に暇な時にちょいちょい見ているのがNCBIのGEO Profilesで、my favorite geneの名前を入れるだけで、その遺伝子が変動しているような解析をずらりと並べてくれます。気になる解析があればNCBIのWebインターフェースからちょっとした解析するも良し。GEO datasetから生データーを落としてきて自前で解析するも良し。何せ便利な世の中になったものです。

分子生物学会が横浜で開催されていますが、ncRNAがらみのシンポでは、午前に廣瀬さんと泊さんオーガナイズの
 ノンコーディングRNA「ネオ」タクソノミ: 分子機能の整理と予測
午後に近大の杉浦さんと僕がオーガナイズの
 RNAタンパク質巨大分子複合体が奏でる細胞運命制御
があります。

分生には参加してないよー、という方や、昨日の美喜子さんがオーガナイズされたpiRNAのセッションやRNA修飾のセッションを残念ながら見逃され方は、土曜日のTokyo RNA Clubで再放送がありますのでご安心を!

2016年11月02日(水)

1足す1は2よりもっと


論文というのはその核心を捉えた時から実際の原稿の受理までには時間がかかるもので、衝撃のデータを目にして雷に打たれたように全身が痺れた瞬間であるとか、これだ!これだ!この技術さえあればうまくいくと世の中全てがバラ色に思えるような、新婚当時のウキウキした気分に勝るとも劣らぬ高揚した気分(今がウキウキしていないとは言っていません)は、数カ月、数年越しのクソ思慮深きレフリーとのバトルを終え枯れ果てた悟りの境地に入ってしまうと、今更どうこう話す気分にもなれないものです。でも、この論文だけは発表後も新婚当時のウキウキした気分が続いているので(今がウキウキしていないとは言っていません)、その馴れ初めから論文に至るまでを、3回シリーズで、、、いや、いつも分量が多くなりすぎるので、今回は読み切りでお伝えします。

秋も深まり一気に冬に突入した感もある北海道は北広島で、新学術ネオタクソノミ第3回班会議が開催されました(10/24-25)。

2016年09月28日(水)

初恋Gomafu(4)

当時の状況としては

1) FISH・免疫組織染色等では差が見られなかった。
2) 行動アッセイで弱いながら表現型が見られた。
3) スプライシング因子と相互作用しており、選択的スプライシングの変化が予想された。
4) 怒涛の発現マイクロアレイ、エクソンアレイ解析では何も差が見られなかった。

ということになります。4)でかなり金銭的にも精神的にも消耗したので「撤退」の2文字が頭によぎりましたが、そこは初恋のなせる技。子育て中の親鳥が餌を探し回るがごとく、ミーティングや学会に出るたびにこの状況を打破してくれるウルトラCに出会えないかと物色し、Ben BlencoweさんのNGSを用いた選択的スプライシング解析を聞いた時は、科学特捜隊が手も足も出ず苦しんでる中ようやく光の国からウルトラマンがやってきたような気がしました。ずん、ずん、ずん、と、だんだん大きくなってくるあれですね。

2016年09月20日(火)

初恋Gomafu(3)

実際に宮川研にSonet君が出向いて行動解析実験をしてわかったことは、これまであれほど表現型が出ない出ないと言って苦しんでいたのに、とりあえず「統計的に差がある」データは、意外(?)とでてくることがわかりました。

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