中川 真一

中川 真一

北海道大学 薬学研究院 教授
▶ プロフィールはこちら

2016年09月10日(土)

初恋Gomafu(2)

あばたもえくぼとはよく言ったもので、見た目表現型が全く出ないGomafuノックアウトマウスがむしろどんなプロジェクトよりも可愛くなってくるというのは初恋のなせる技。というかこれは悪女につかまったという方が良いのか、、、

2016年09月09日(金)

初恋Gomafu(1)

My favorite geneといえばGomafu。その名の由来は、そのまんまゴマフアザラシなわけですが、先日、稚内を旅行中、ふと海辺に立ち寄ったところ、遠くの浅瀬でゴマフアザラシの群れがのんびりくつろいでいるのに出くわしました。さすが北海道。レアものゲットです。ん、多摩川を泳いでいたこともあったか、、、

2016年06月30日(木)

PKH26

今回はAKB48ならぬPKH26のお話です。一文字しかかぶっていないではないかというツッコミは置いといて、超絶RNAラベリングとライフハックならぬラボハック、さらにはさらりとしたNGS再解析と、バトンを受け取った側からするといきなりハードルが上がってしまった感のあるリレーエッセー「私の技、カイゼン術」。ここらでちょっとゆるめの話題で息抜きを、、、

Alpha GOの衝撃はいきなりの対戦でトッププロが全く歯が立たなかったという点で、将棋電王戦の衝撃をはるかに超えるものがありました。「変な手ですねえ」「これは一目人間が有利」という序盤から、あれっ、あれっ、おかしいですよ、となって、結果は惨敗というのはプロ棋士が初めてコンピュータに一発入れられたあの第2回電王戦で一度通った道。強烈な既視感がありましたが、なんといっても心穏やかならぬ気持ちにさせられるのは、コンピュータソフトの序盤の「変態」ぶりです。局面が計算可能な終盤はともかく、場合の数では天文学的な数字になる序盤でもこれまでの常識を打ち破る手を指し、しかもそれが強い。強烈に強い。そうしてみると、コンピュータがはじき出した「評価値」の方が理にかなっている気さえしてくる。構想だとか創造力とか大局観だとかがが問われる序盤の局面ですら人間が歯が立たないのであれば、もう人間がやることは無くなってしまうのではないかと、ムンクの叫び状態になってしまった人は研究者の中には少なからずいたのではないでしょうか。はい。私もそうです。

2016年05月07日(土)

キット賛歌?

最近の学生は「キット」を使うから原理が解らなくてね。
私なんて昔じぶんの「キット」作ってたもんね。
「キット」なんてカネかかるばっかりで。

という愚痴をこぼされる年配、いや、妙齢、いやいや、働き盛りの先生方、よくおられるような気がします。実際、僕が留学中はコンピテントセルなどは下手をすると一本1000円ぐらいで売られていたりしましたから、気合を入れて自作のコンピを1000本分注して、100万円丸儲け!!!となんか意味もなく豊かな気分になって、ちょっと奮発してカレーとKing FisherでRegent streetのガンジーでひとり打ち上げしていたのは良い思い出です。

ラボで行われている実験の伝統や伝説のほとんどはただの迷信、というのは良くある話で、プラスミドプレップする時のリゾチームだとか、コンピテントセルのヒートショックだとか、RNA実験に使う水のDEPCだとか、まあ少しは変わるのかもしれないけれども本質的には変わらないよね、という話はゴロゴロしています。FISHにおいても伝説がありまして、それは、

DIGラベルしたプローブはマウスのモノクロでしか検出できない。

です。したがって、マウス由来の抗体で何かのマーカータンパク質を染めて二重染色したいときは、FITCラベルしたプローブをウサギのポリクロで見ないといけない、これはDIGラベルより若干感度が落ちるから困ったねえ、というのが勝手に僕が作った伝説ですが、今回、総括斑の超解像顕微鏡用の予算に少し余裕があったので、この伝説を検証することにしました。

結論からいくと

伝説はやっぱりただの伝説。DIGのポリクロめちゃそこそこ使える、でありました!!!

2016/4/22追記:いろいろ試してみると、現状どうもやはりそこそこ使える、のレベルで、FITC/anti-FITC(Rb)/anti-Rb Cy2の組み合わせにはかなわないようです。難しいものです。

というわけで、いろいろ紆余曲折がありながらも、以下の4.5SHを介した新規遺伝子発現制御機構を見つけることができました。

1) SINE B1と高い相同性を持つncRNA 4.5SHは核内に大量に存在する。
2) 4.5SHはUTRにアンチセンス方向にSINE B1が挿入されたmRNA群(asB1群)と二本鎖を形成する。
3) 二本鎖形成によって核外輸送の効率が低下する。
4) 4.5SHをノックダウンするとasB1群が細胞質で増加する(SINE B1プローブで確認)。

ここで大きな問題が一つ残っています。そう。asB1群の中で、具体的なターゲット遺伝子は何か?という問題です。これを明らかにしないことには、なかなか「良い」論文にならない>「良い」論文がないとお金がとれない>お金がとれないと実験ができない>実験ができないから「良い」論文が書けないという負のスパイラルが発動!してしまいます。そこで、相当のコストがかかるので躊躇していたのですが、ここが勝負と気合を入れてマイクロアレイ解析をすることにしました。今ではレトロ感が漂うマイクロアレイ解析ですが、2009年当時はまだまだピカピカの高級車的な存在でして。。。

前回からだいぶ時間が経ってしまいましたが、そろそろいろいろ後ろも詰まっていますので、4.5SHは蜜の味の長文最終章「夢から醒めて」??をお送りします。は?何の話だったけ?ということで、過去二回をざっくりまとめますと、、、

↓核内に局在する新規lncRNAを同定するため、Fantomクローンをプローブに片っ端からin situをしていた。
↓核内に大量に蓄積するもの大量に同定!
↓実はレトロトランスポゾン配列が入っていただけだった。orz...
↓気を取り直してレトロトランスポゾン配列を除いたプローブで実験再開。
↓核内に大量に蓄積するAK037328を同定!
↓そのプローブでノザン解析しても予想されたところにバンドが出ず、、、

2015年09月16日(水)

4.5SHは蜜の味(2)

 4.5S RNAH(以降4.5SH)という一目無機質なこの名前。その名の通りSは沈降係数スベトベリのS。Hは、4.5Sの沈降係数を持つRNAをアガロースゲルで展開したらバンドが幾つか見えて、順番に一郎、二郎、三郎ならぬ、A, B, C, ....と名前をつけて行って、8番目の兄弟ということでH。ということらしいですが、HはこのRNAの配列を決定された原田文夫先生の名前のHとかいう噂も、、、ともあれ、このRNAが同定されたのはなんと1980年。DNAクローニング技術が一般的に広く普及する以前の話です。32Pラベルされているとはいえクローニングしなくても電気泳動で分離すればバンドが見えてしまうわけですから、発現量の多さが分かるというものです。シークエンスの決定も今ではなかなか想像できないですが、このRNAを精製してきて、RNaseA(C or Uの3'を切断)もしくはRNaseT1(Gの3'を切断)で切断した断片を二次元ペーパークロマトで展開してフィンガープリントを作成。それぞれのスポットを様々なRNaseで分解して塩基組成と末端配列からフラグメントの配列を予測。さらに部分分解を用いてフラグメントをアラインメント。気の遠くなるようなベンチの作業とデスクでのパズルのピースの組み合わせを経て決定された配列は1980年のNARに発表されています(Harada and Kato, NAR 8, p1273- (1980))。potential functionについての洞察は示唆に富み、とてもエレガントな論文です。
 我々とこの4.5SHの出会いは、多くの劇的な恋がいつもそうであるように、まさに偶然と勘違いから始まりました。

2015年09月06日(日)

No.5

今ではしれっとncRNA研究者のようなふりをしていますが(トレース)、元々はトリ胚の解剖屋。一番お気に入りといえば何と言ってもこれ、No.5ピンセットです。ピンセットでncRNAをつまめるわけもなく、これは当然、胚の解剖用なわけでありますが、このピンセット。留学先でfellowshipの研究費で初めて買った消耗品(あとは砥石とPAGEのゲル板とロータリシェーカーだったか、、、)のうちの一つ。スイスはDumon社製の品で、もう17年あまりお世話になっています。

ブログアーカイブ

ログイン

サイト内検索