大阪大学 医学系研究科神経遺伝子学 教授
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2年間、大変お世話になりました。沢山の新進気鋭の研究者と知り合うことができ、研究や仲間の広がりという意味では大変実り多い2年間でした。
私が本領域に参加した頃には、PAR-CLIP法というRNA結合タンパク質の標的を網羅的に同定する手法をラボ内でできるようになって数年が経過した頃 でした。この領域の発展は目覚ましいものがあり、最初にHITS-CLIP法が発表されてから、PAR-CLIP法、iCLIP法と改変され、その後も hiCLIP法、eCLIP法と新たな解析法が発表されました。また、修飾を解析するmiCLIP法やRNA結合タンパク質を網羅的に同定するPAR- CL法などCLIP法を原点とした派生法も多く誕生しました。PAR-CL法を使った論文によると、ヒトには最大1,500個ものRNA結合タンパク質が 存在する可能性が示唆されています。その大方は標的も機能も定かではないものですので、私はこれらの論文を読んだ時に、次々機能未知のRNA結合タンパク 質にPAR-CLIPを行えば、当分の間飯の種には困らないのではないかと考えたものでした。
研究においては、予想通りの結果にならないことは日常茶飯事である。しかし、それが大発見であることは極めて稀で、大概はどこかで何かを間違えた結果であることがほとんどだと思う。自分で実験していた頃は、あのステップで間違ったかもしれないなと振り返ることは比較的容易だった。しかし、PIになるとそうはいかない。学生が持ってくる様々な不思議な結果について、探偵のごとく推論を重ねるしかない。本当は学生自ら解決して欲しいのだが、何人もの学生を指導していると、だいたい4通りのパターンに分類できることを学習した。
自分は、究極に困らない限りものを替えない性格である。決して面倒なわけではなく、新しいものに執着がないだけである。そんなこんなで、大概のものは壊れるまで使い続ける。携帯電話は、アメリカから帰国した8年前に購入したものをいまだに使っている。折りたたみ式で、もはや液晶画面は3回に1回くらいの確率でしかつかないが、それなら3回開ければよいだけのことである。服も鞄もすり切れるまで替えないので、大概は家族から強制的に捨てられてしまい、渋々新しいものを買いに行くといった具合だ。今使っている仕事用のパソコンも、同じくアメリカから帰国した8年前に購入したMacBook Proである。当然ながら、OS Xで作動する。ご存じの方も多いかと思うが、2001年にOS 9からバージョンアップした際に、互換性がなくなってしまった。このため、OS 9でしか作動しないソフトのために、一時期のマックパソコンにはOS XとOS 9の両方が組み込まれていた。
これから2年間お世話になります大阪大学の河原です。私は疾患病態に関与するRNA代謝異常に興味がありますが、今回は完全に基礎的な内容です。長鎖ncRNAは、これから大いに発展する研究領域だと思いますが、現在その黎明期にあって非常に混乱しています。個々のncRNAの名称にも統一感がなく、HOTAIRやXISTくらいまでは覚えられましたが、最近の論文に出てくるncRNAは、聞いてもどんな機能だったか全く思い出せません。また、PRC2複合体などの論文を読んでいても、何の因子にどうやって結合するのかよく分からないがとりあえずncRNAが結合して、どうやって機能するのかよく分からないが結果的に転写が制御されているという消化不良を起こしそうな内容のものが非常に多い印象を受けます。何とかこのncRNAによる転写制御といった領域を整理して、できればマイクロRNAとRISCの関係のような明快な関係性と作動機序が明らかにできないかなと思ったのが応募のきっかけです。返って混迷を深める危険性もあるのですが、何とかこの領域に貢献したいと思っています。記憶に残る研究をすることがモットーですので、研究室のメンバーのテーマも個々に自由です。もし研究に参画してみたい方がおられましたらいつでもご連絡ください。それでは、よろしくお願いします。