中川 真一

中川 真一

北海道大学 薬学研究院 教授
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2017年08月02日(水)

ガンとNeat1の不思議な関係

アガサクリスティの「蒼ざめた馬」の冒頭シーン。一人の男をめぐって二人の女性が掴み合いの喧嘩をする強烈なシーンがありますが、そういうシーンはドラマではよくある展開ですが、現実世界ではほとんど見たことはありません。都市伝説みたいなものだと思っていたら、30年ほど前、某旧友をめぐって某女子校で似たようなシーンが展開されていたとかいう話をつい最近友人より聞きまして、そうか、そういう世界もあるんだなあと非モテ系の僕としてはちょっぴりというかだいぶ羨ましい、とかなんとか言っていると奥さんにキッと睨まれそうですが、プライベートではともかく、仕事で使っているモデルマウスが引っ張りだこというのは文句なしに嬉しいものです。そう。国内外からリクエスト来まくりの引っ張りだこのモテ男くん、Neat1 KOマウスの話です。昨年、今年と、このモテ男くんを使ったガン研究の論文がChris MarineさんとLaura Attardiさんのところから発表されました。これがややこしいことに一見すると正反対の結論。片や、Neat1がなくなるとガンになりにくい。片や、Neat1がなくなるとガンになりやすい。一体どっちなの?ということなのですが、両グループの共同研究者として、僕なりの理解をちょっとまとめてみようと思います。

札幌はガトーキングダムで開かれた内藤カンファレンス。自宅から車で40分ほどにもかかわらず3泊4日もすることになり家族が悲しむかと思いきやむしろ喜んでいるようだったのでちょっぴり悲しくなりつつも、今回のテーマはずばり、"Noncoding RNA: Biology, Chemistry, & Diseases"。GordonやKeystoneに引けを取らない豪華な海外ゲスト。超ウルトラスーパーデラックスエキサイティングでグレートでプロジーヂャスなミーティングは非常に熱気に満ちていて、興味のある話はいくら聞いていても飽きないということを本当に実感した4日間でした。

2017年05月30日(火)

Spheroid10年いまむかし

Pink Floyd繋がりというわけでもないですが、同じく英国のバンドThe Policeが1983年にリリースしたシンクロニシティという有名なアルバムがありまして、これを初めて耳にしたのは厨二病真っ盛りのころ。しょっぱなのSynchronicity IのA connecting principleから美しく韻を踏んだサビの部分の難解な歌詞は中坊にとってはまさに猫にマタタビで、意味は良くわからないけれども世の中の真理に触れたようなプチ悟り状態、ヤクザ映画を見た後に肩で風を切って歩きたくなる症候群にかかってしまったのはちょっと恥ずかしい遠い思い出です。

ピペットマンとピンセットばかり握っていたベンチ屋がMoistureを目指す時、越えなければいけない最初の壁がTerminalのコマンドライン、次の壁がRでしょうか。最近、海の向こうでは壁を作るのがはやってるみたいですが、壁はピンクフロイドだけにしておいて、目指せMoiture、サルでもできるRの続きです。

ここ数年で、コテコテのベンチ屋でもある程度の次世代シークエンサーのデータ解析ができる環境がどんどん整ってきました。なんのセットアップも必要なくNCBIのBLAST感覚で手軽に利用できるのがクラウドベースの解析環境で、老舗のGalaxyに加え、最近はセルイノベーションプログラムで整備された遺伝研のMaserなどがきめ細やかなサービスを提供してくれています。さすが遺伝研。また、とっても素人friendlyな「次世代シークエンサーDRY解析教本」などのスグレモノ書籍も出版され、my Macに各種ツールをインストールして自前でなんちゃってNGS解析しているwetな学生さん(性格がwetなわけではない)も数多くおられると思います。そう。もう、仕事をDryとWetなんて分ける時代ではない。今や時代は、理研CDBの工樂さんがおっしゃるところの、"Moisture"で行こう!です。(2/8追記:ったくこれだから素人は、、、というミスがありましたので訂正入れました

2017年01月20日(金)

超解像あれこれ

「中川さんSIMって知ってる?やばいらしいよやばい。ミトコンドリアの内膜が見えるらしいんだよね。やばい。」と、
本領域の計画班員の鈴木勉さんから超解像顕微鏡のことを初めて聞いたのは2010年のこと。ちょうど、GérardさんとArchaさんたちが電子顕微鏡観察でパラスペックル内部でNeat1が規則正しく折りたたまれていることを報告した直後で、それだけやばい顕微鏡であればミトコンドリアの直径とさして変わらないパラスペックルの内部構造も綺麗に分かるに違いない!と、意気込んで大船のニコンの開発部にあるデモ機に早速サンプルを持ち込んで撮影してもらったのですが、ただの点にしか見えず。なんだこれ、大したことないやん。とか思っていたのですが、当時はカバーガラス厚が重要、マウント剤の屈折率が重要、カバーガラスをサンプルに乗せるのではダメ(カバーガラスにサンプルを貼り付ける・細胞を培養する)ということ正しく理解しておらず、点にしか見えなかったのは後から考えてみれば単にサンプルの調整の問題でした。ニコンさん、ごめんなさい。無知とは怖いものです。

「ネット」=「妖しいもの」というのが一昔前は定番だったと思いますが、今ではすっかり市民権を得て、新聞やテレビよりも信頼できる、なんて言っている人もいるようです。その真偽はともかくとして、ネット上のSNSは情報収集という観点からはなかなかバカにならないものがありまして、先日の当ブログのエントリーにも、早速rnacintosh LC475さんからツッコミがありました。

ちょっと前に谷上さんも書いておられましたが、今の時代、ちょいと調べてみようか、と思った実験の結果が公共データーベースにのっているというのはよくある話で、自分の実験を組み立てる前にデーターベースを当たってみて情報収集をするというのは、ムダを省く上でも必須の作業になりつつあります。個人的に暇な時にちょいちょい見ているのがNCBIのGEO Profilesで、my favorite geneの名前を入れるだけで、その遺伝子が変動しているような解析をずらりと並べてくれます。気になる解析があればNCBIのWebインターフェースからちょっとした解析するも良し。GEO datasetから生データーを落としてきて自前で解析するも良し。何せ便利な世の中になったものです。

分子生物学会が横浜で開催されていますが、ncRNAがらみのシンポでは、午前に廣瀬さんと泊さんオーガナイズの
 ノンコーディングRNA「ネオ」タクソノミ: 分子機能の整理と予測
午後に近大の杉浦さんと僕がオーガナイズの
 RNAタンパク質巨大分子複合体が奏でる細胞運命制御
があります。

分生には参加してないよー、という方や、昨日の美喜子さんがオーガナイズされたpiRNAのセッションやRNA修飾のセッションを残念ながら見逃され方は、土曜日のTokyo RNA Clubで再放送がありますのでご安心を!

2016年11月02日(水)

1足す1は2よりもっと


論文というのはその核心を捉えた時から実際の原稿の受理までには時間がかかるもので、衝撃のデータを目にして雷に打たれたように全身が痺れた瞬間であるとか、これだ!これだ!この技術さえあればうまくいくと世の中全てがバラ色に思えるような、新婚当時のウキウキした気分に勝るとも劣らぬ高揚した気分(今がウキウキしていないとは言っていません)は、数カ月、数年越しのクソ思慮深きレフリーとのバトルを終え枯れ果てた悟りの境地に入ってしまうと、今更どうこう話す気分にもなれないものです。でも、この論文だけは発表後も新婚当時のウキウキした気分が続いているので(今がウキウキしていないとは言っていません)、その馴れ初めから論文に至るまでを、3回シリーズで、、、いや、いつも分量が多くなりすぎるので、今回は読み切りでお伝えします。

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