2019年02月18日(月)

生き物学

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 近年のRNA分野の流れは驚異的なほど速い。piRNAやlncRNAでRNA研究の盛り上がりが最高潮に達したかと思ったのもつかの間(もちろんこれらのRNAは今もホットである)、circRNAやらRNA epigeneticsやら液―液相分離やら、続々と新しいキーワードが飛び出してきて著名ジャーナルの目次を飾っている。CRISPR-Cas9や次世代シークエンスの発展がこの流れに大きく貢献してきたのはいうまでもない。私がポスドク時代に身につけた知識(microRNA、ZFNやTALEN、マイクロアレイ)はすでに過去のものとなり、自身をアップデートし続けなければあっという間に取り残されてしまう。ここ数年は、知識と技術が爆発的に拡大する時代に居合わせる高揚感と、焦りと不安が同居したような時間を過ごしてきた。思えば論文もコンペティションになってばかりで、自分のタイミングで投稿した記憶があまりない。のんびりしがちな自分には必要な緊張感なのかもしれないが、研究の底が浅くなっていくような気もしている(そもそも元から深みはない)。

 最近、ある方に会う度に「生き物学をやりなさい」と言われるようになった。別の方には「生き物の視点がなくなってきている」と指摘されたこともある。なんとなくの自覚はあったが、複数の方に改めて指摘されるとドキッとする。そういえば「なぜRNA、なぜゼブラフィッシュなんですか」と純粋な心で聞かれることも増えた。個人的にはゼブラフィッシュはRNA研究にうってつけのモデル生物だと信じているし、もっともらしい説明はちゃんと思いつくのだが、自分の口から出た回答がしっくりこないことがある。ここ数年のRNA研究の盛り上がりに乗っかって、たくさん楽しい思いをさせてもらったが、流れの速さの中で麻痺してしまった感覚もあるようだ。今一度初心に還って、生き物の視点からRNAを見つめてみようと思う。

三嶋 雄一郎

京都産業大学 総合生命科学部 生命システム学科 准教授
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