【公募研究5】ヘテロクロマチン形成におけるXist RNAの作動エレメントの役割

哺乳類のメスにおけるX染色体不活性化は長鎖ノンコーディングRNAであるXistがX染色体を覆うことで引き起こされます.我々はXist によるヘテロクロマチン形成機構を明らかにするために,Xistの機能に不可欠な作動エレメントにあたる領域を欠失した変異型Xist RNAをマウス胚で内在性Xist遺伝子座から発現させました.その結果,変異型Xist RNAはX染色体を覆いはするものの,これを正常に不活性化できないことがin vivoで初めて確認されました.興味深いことに,そのX染色体のヒストン修飾を免疫染色で調べると,正常な不活性X染色体と区別がつかない,ヘテロクロマチン様の構造が構築されていることがわかりました.このことから,変異型Xist RNAは偽ヘテロクロマチンとも呼べる一見凝縮した構造を構築できるものの,そのクロマチン状態はX染色体連鎖遺伝子を正しく抑制できるものではないと考えられます.本研究では,Xist RNAの作動エレメントの有無がもたらすこうした差の実態を明らかにするため,野生型のXist RNAで覆われる正常な不活性X染色体と変異Xist RNAで覆われるX染色体の間のエピジェネティックな状態染色体ワイドに比較し,遺伝子発現との相関を明らかにします.

佐渡 敬 (SADO, Takashi)
  • 近畿大学
  • 農学部
  • 教授

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