【公募研究7】表現型に性差を示すlong ncRNA Fat60 KOマウスの機能解析

近年、哺乳類ではタンパク質をコードしないnon-coding RNA(ncRNA) が発生、分化、病気などの生物現象に深く関わっていることが明らかになりつつあります。この内200塩基以上の長いncRNA(long non-coding RNA, lncRNA)は哺乳類の発生に必須な「ゲノムインプリント」や「X染色体の不活性化」等の現象に関与することから注目されていますが、個体レベルで生理機能が明らかになっているものは稀であり、その役割の解明が求められている状況です。これまで我々はゲノムインプリントを受けて父親由来のX染色体からのみ発現するlncRNAとしてFat60を同定することに成功しています。Fat60の機能を調べるためKOマウスを作製したところ、ほぼ雌の個体でのみ異常が観察され、雌雄間で表現型の性差が見られることを突き止めました。本研究では、KOマウスを用いて①Fat60 lncRNAの生理機能、作用機序の詳細を明らかにし、②なぜ表現型が性差を示すのか?について仮説を立て検証したいと考えています。生理機能を示すFat60 KOの解析は、解明の遅れているlncRNAの作用機構を理解するうえで重要な手がかりとなると期待されます。

小林 慎 (KOBAYASHI, Shin)
  • 東京医科歯科大学
  • 難治疾患研究所
  • 非常勤講師

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