【公募研究3】代謝酵素遺伝子ノンコーディングmRNAの食餌による発現制御機構の解明

真核生物のタンパク質をコードする遺伝子には、品質管理機構によって速やかに分解されてしまうノンコーディングmRNAを、選択的プロセシングにより常時産生しているものがあります。私たちは、mRNAの品質管理機構に異常を示す変異体線虫のトランスクリプトームを野生型と比較することにより、そのようなノンコーディングmRNAを体系的に探索しました。そして、アミノ酸代謝酵素をコードする遺伝子の一部がノンコーディングmRNAを発現すること、さらに、選択的スプライシングによるこれらのノンコーディングmRNAの発現比率が、食餌となる細菌の種類により異なることを見出しました。この現象は、ハウスキーピング遺伝子であるアミノ酸代謝酵素の発現量が食餌や体内代謝環境に応答したノンコーディングmRNAの産生により変化する未知の個体レベルでの制御機構の存在を示唆しています。本研究では、アミノ酸代謝酵素遺伝子が食餌の種類に応答して選択的スプライシングによりノンコーディングmRNAを積極的に産生するための作動エレメントと作動装置の実体を解明することを目指します。そして、アミノ酸代謝酵素の発現がノンコーディングmRNAの産生を介して食餌により制御されることの生物学的意義を探ります。

黒柳 秀人 (KUROYANAGI, Hidehito)
  • 東京医科歯科大学
  • 難治疾患研究所
  • 准教授

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