- 高分子非コードRNA作用マシナリー構成要素の探索と解析
鈴木 健夫
非コードRNA作用マシナリーのはたらきを理解するには、構成因子であるRNAやタンパクの時空間的な動態を考慮する必要がある。本研究では高感度精密質量分析法を活用した (1)高分子非コードRNAの直接検出に基づくプロセシング後構造の詳細な解析 (2)マシナリーを構成する新たな因子間相互作用の探索 を行い、作用マシナリー全体像の特定や機能との関わりの解明を目指す。
- Xist RNA作用マシナリーの調節機構
佐渡 敬
Xist RNAの哺乳類X染色体不活性化における機構には不明な点が多く残されている。本研究では (1)不活性Xの維持に必須なクロマチン制御複合体の同定および機能解析 (2)Xist RNA局在化制御因子の機能解析 からXistの機能調節メカニズムの詳細を明らかにすることで、高分子非コードRNA作用マシナリーの多様な調節機構を解析するための礎とする。
- 非コードRNA作用マシナリーの医薬応用
和田 猛・竹下 文隆
非コードRNAの医薬応用への研究として、 (1)非コードRNA医薬の生体内での安定性に関与するホスホロチオエートRNAの不斉合成手法の確立と生理活性に及ぼす効果の解析 (2)独自に開発した癌転移モデル動物およびsiRNAのデリバリーシステムを用いた非コードRNA医薬の有効性、安全性の前臨床的解析 を通じて非コードRNA作用マシナリーの作用機序に基づく医薬デザインを行う。
計画研究組織図
平成24年度-平成25年度公募研究の概要
- アンチセンス鎖の分子機能解析
村上 浩士
分裂酵母では減数分裂時に多くのアンチセンス鎖の発現が検出されている。しかし、その機能についてはほとんど解明されていない。減数分裂特異的なフォークヘッド型転写因子であるMei4は、減数分裂特異的スプライシング、第一減数分裂の開始、遺伝子組み換えや胞子形成に必要である。減数分裂特異的に検出されるアンチセンス鎖の機能やスプライシングにおける分子機構は解明されていない。そこで本研究は、減数分裂特異的なスプライシング機構におけるアンチセンス鎖の役割及びこれに関する因子の同定を目的とする。
- Ube3a遺伝子座における超長鎖非コードアンチセンスRNAの構造・機能解析
清澤 秀孔
「組織特異的なゲノム刷り込み」を示すUbe3a遺伝子は神経細胞でのみ、母親由来の片アレル発現をする。神経細胞への分化過程で父親由来のアレルが抑制される際に、内在性アンチセンスRNAが関与していると考えられており、非コードアンチセンスRNAとエピジェネティックな遺伝子発現制御の関わりを解析したい。
- 顎顔面形態形成における高分子非コードRNA:Evf2の機能とその分子基盤の解明
栗原 由紀子
近年、トランスクリプトーム解析などにより多くの高分子非コードRNAの存在が明らかになり、その分子機能が注目されている。本研究では、顎顔面の形態形成に高分子非コードRNAであるEvf2が関与していることを基盤として、RNA-蛋白複合体の検出や他の因子との相互作用を明らかにすることにより、その分子機能と個体発生における生理的役割を解明する。これにより、他の多くの高分子非コードRNAの機能解明にも貢献したいと考える。
- miRNAの成熟制御によるRNAネットワークの解明
浅原 弘嗣
非コードRNAの一つmiRNAはその成熟過程において厳密に調節をうけている可能性が示唆されてきているが、まだ個体レベルでの情報は少ない。本研究ではmiRNAの成熟制御にかかわる分子に注目し、その機能を遺伝子改変マウスを作製することで発生、代謝、癌化などの複数の医学・生物学的視点から解析し、非コードRNAマシナリーの成熟制御レベルでの「調節機構」および「生理機能」の理解に貢献する。
- インプリント長鎖非コードRNAの核内動態とクロマチンダイナミクスの解析
堀家 慎一
15q11-q13のゲノム刷り込み領域には,父性発現の長鎖非コードRNA(UBE3A-ATS)が存在し,下流のUBE3A遺伝子のゲノム刷り込みを制御していると考えられている。本研究では,UBE3A-ATSが転写している父方アレル特異的な脱凝集したクロマチン構造と遺伝子の核内配置に着目し,どのようにUBE3A-ATSが近傍のクロマチンリモデリングを介し,UBE3A遺伝子のゲノム刷り込みを制御しているかについて明らかにする。長鎖非コードRNAが高次クロマチン構成因子と共に,遺伝子の核内配置を規定していることが明らかになれば,遺伝子の核内配置の重要性が明確なものになると共に,長鎖非コードRNAの新たな役割を提唱できる。
- 動物由来RNAウイルスが制御する非コードRNAマシナリーの探索と解析
本田 知之
細胞核は、極めて動的で、しかもRNA分子の安定化には適さないと考えられる環境である。ボルナウイルスは、そのような核内環境で持続感染する唯一のRNAウイルスである。ボルナウイルスは持続感染細胞において、独自の核内構造物を産生する。ウイルスのマイナス鎖ゲノムRNAは一種の非コードRNAであり、この核内構造物は宿主の非コードRNAマシナリーを利用していると考えられる。本研究では、ボルナウイルスに関連する非コードRNAマシナリーを明らかにすることで、宿主非コードRNAの作り出す核内環境とその意義を解明したい。
- 高次生命現象を指標としたmiRNA-標的遺伝子作用マシナリーの解明
蓮輪 英毅
マイクロRNA(miRNA)は転写後調節の主要因子として、動物個体における様々な高次生命現象を演出していると考えられている。本研究では、miRNA制御系が破綻した様々な遺伝子改変動物を用いることで、miRNAとその標的遺伝子が作り出す高次生命現象を明らかにし、動物個体レベルでのmiRNA-標的遺伝子作用マシナリーの解明を目指す。
- p53の下流で働く非コードRNA,lincRNA-p21遺伝子操作マウスの解析
荒木 喜美
マウスES細胞を用いた遺伝子トラップ法は、トラップベクターをES細胞のゲノムにランダムに挿入させることにより、変異を誘発するシステムである。トラップクローンの中には、非コードRNA遺伝子をトラップしているものも存在し、lincRNA-p21遺伝子トラップマウスもその1つである。この変異マウスと、Cre/変異loxシステムによる部位特異的挿入の系を用いて、単なるKO解析だけでなく、強制発現マウス、変異体発現マウスの作出と解析により、生体内でのlincRNA-p21の発現制御機構、機能や作用機序を明らかにする。
- 骨代謝におけるマイクロRNA生理機能の解明
福田 亨
近年の高齢化社会の進展に伴い、骨関連疾患の克服につながる骨代謝調節機構の研究が進められているが、未解明の点が多い。そこで本研究課題では骨代謝に関与するマイクロRNAに着目した。分子生物学的手法を用いたマイクロRNAの機能解析と遺伝子改変動物を用いた生体レベルでの解析を包括的に行い、マイクロRNAによる骨代謝調節機構の解明と医療応用をめざす。
- microRNAが関与する翻訳抑制機構の素過程の解析
藤原 俊伸
cap構造の認識から開始される翻訳開始複合体の形成は翻訳の律速段階であり、タンパク質合成を調節するうえでこの過程を制御することは効率がよく、翻訳開始因子群のリン酸化を担うシグナル伝達因子を中心に実例も数多くある。そしてこれまでにmicroRNA(miRNA)による翻訳抑制の標的は翻訳の律速段階である開始であることが強く示唆されている。したがって翻訳を下方修正する手段としてmiRNAによる翻訳開始の抑制は効率的であるといえる。しかしながら、高等真核生物におけるmiRNAによる翻訳開始過程の抑制の素過程は、精力的に研究されているmiRNAが触媒するmRNAの分解過程とは異なりその詳細が明らかにされていない。そこで、miRNAによる翻訳開始抑制時に、翻訳開始過程のどのステップが標的とされているのか、またどのような因子を標的としているのかを生化学的技法を駆使して明らかにする。
平成22年度-平成23年度公募研究の概要
- 宿主感染に関与する寄生線虫の非コードRNAマシナリーの機能解明
GOTO DEREK
非コードRNAマシナリーは、植物、動物を問わず、細胞の分化とその維持に深く関与している。宿主寄生体相互作用においても、非コードRNAマシナリーが深く関与していると考えられる。植物に寄生するネコブ線虫は多くの農作物に壊滅的な被害を与えることが知られている。ネコブ線虫は根に寄生する際、宿主の細胞を分化させるが、その仕組みを明らかにする必要がある。本課題では、ネコブ線虫の寄生と宿主細胞変化における非コードRNAマシナリーの役割を明らかにする。
- miRNAを介した雄性化機構の分子基盤の解明
松本 高広
性差の観点から非コードRNAの機能に迫るため、本研究では雌雄における唯一の遺伝的差異であるY染色体に着目する。生化学的手法による非コードRNAプロセシングの分子機能解析から、遺伝子改変動物を利用した個体レベルのアプローチを有機的に関連づけた統合的研究を推進し、“RNAプログラムに依存した雄性特異的ゲノム管理機構”の解明をめざす。
- 癌化・老化を左右する新規非コードRNAの機能解析
神武 洋二郎
近年の大規模なトランスクリプトーム解析の結果、mRNAと同じような構造を持つmRNA型非コードRNAが数多く存在することが明らかとなっているが、その機能は不明な点が多い。本研究では(1)細胞増殖を制御する新規mRNA型非コードRNAを探索し、その作用マシナリーを解明し、(2)さらに遺伝子改変マウスを用いてその生理機能の解明を目指す。
- 神経特異的RNA結合蛋白質とmicroRNAによる翻訳制御機構の解明
藤原 俊伸
RNA結合タンパク質は、転写後遺伝子発現の調節における主役である。特に、分化・発生等の高次な細胞機能においてはmRNA上の制御信号、 microRNAとともにRNA結合タンパク質の働きが鍵を握る。本研究課題は、神経細胞の分化や機能発現を、翻訳調節ネットワークという視点から解明することを目的として、神経特異的なRNA結合タンパク質の働きがmicroRNAマシナリーとどのように協調あるいは拮抗して働くかを研究する。