新学術領域研究 非コードRNAについて

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近年のトランスクリプトーム研究により同定された膨大な数の非コードRNA (non-coding RNA, ncRNA)は、そのほとんどが機能不明であるにもかかわらず多くの研究者の関心を集め、その生物学的役割の解明に興味が注がれています。

小分子RNAを中心とする非コードRNA研究の進展により、ゲノムのエピジェネティックな修飾や、転写・翻訳、RNAの安定性など、遺伝子発現の様々な段階で非コードRNAが重要な制御因子としての役割を果たしていることが周知の事実となりつつあり、small interfering RNA (siRNA)を初めとする非コードRNAを用いた医薬品の開発も急速に進んでいます。このような状況にもかかわらず、「非コードRNAがどのようなメカニズムで働くのか」という非コードRNAの動作原理に対する我々の理解は驚くほど進んでいません。

その理由の一つとして、非コードRNAはパートナーとなる相互作用因子などを含むエフェクター複合体として初めて機能を発揮すると考えられるにもかかわらず、これまでの研究が非コードRNA配列の網羅的な同定と細胞や個体での機能解析を中心に展開されてきたことが挙げられます。よって、非コードRNAの役割を詳細に理解していくためには、非コードRNAそのものだけでなく、エフェクター複合体や相互作用因子を包括した研究を、多種多様なレベルで展開していくことが必要不可欠となります。

本研究領域では、エフェクター複合体やそれに関わる因子、それらの作用機序を総称して「非コードRNA作用マシナリー」と名付け、(i) マシナリーが分子レベルおよび個体レベルで果たす役割の理解と動作原理の解明を進めると同時に、(ii)動作原理の理解に立脚した医薬応用研究に向けた基盤の整備を領域全体の連携により推進していくことを目指します。